| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-478  (Poster presentation)

ソラマメヒゲナガアブラムシの野外個体群動態を制御する要因の解析【A】
Analysis of Factors Controlling the Field Population Dynamics of Megoura crassicauda (Aphididae)【A】

*赤星裕良(佐賀大学), 矢野文士(鹿児島大学), 徳田誠(佐賀大学)
*Yura AKAHOSHI(Saga Univ.), Fumito YANO(Kagoshima Univ.), Makoto TOKUDA(Saga Univ.)

 陸上生態系で最も適応放散した分類群の一つである昆虫は、その約半数が植食性であり、植物バイオマスを利用して多様化したと考えられる。一方、植物は地球上で最大のバイオマスを有し、植食者に食べ尽くされることは稀である。このことは、植食性昆虫の個体群密度を抑制する制御要因の存在を示唆している。とくにアブラムシ類は単為生殖により短期間で急増するため、強い密度制御が作用している可能性が高い。本研究では、マメ科植物を寄主とするソラマメヒゲナガアブラムシ(以下、ソラヒゲ)の密度制御要因の解明を目的とした。先行研究では、野外においてソラヒゲは寄主カラスノエンドウを枯死させず、種子生産にもほとんど影響を与えないことが報告されている。一方、室内の閉鎖環境では植物体を覆い尽くして枯死させることが示されており、この乖離が何によって生じるのかは未解明であった。そこで春季に野外調査を行い、カラスノエンドウの野生株および定植したソラマメ株上におけるソラヒゲの個体数推移、寄生部位、競争者(マメアブラムシ)および天敵(テントウムシ類)の個体数を記録した。その結果、ソラヒゲは茎頂部や莢への部分的寄生にとどまり、植物体全体を加害することはなかった。また、株の枯死前にソラヒゲは消失し、近隣の別株で再出現した。さらに、テントウムシの飛来数はソラヒゲの増殖率に有意な影響を与えず、マメアブラムシもソラヒゲ増殖期には低密度であった。以上より、ソラヒゲの密度は天敵や競争者、気温などの外的要因のみでは説明できず、寄主植物側の生理的変化がソラヒゲの部分的寄生や分散を誘導し、結果的に密度が制御されていることが示唆された。本発表では、ソラヒゲ寄生が植物の生育に及ぼす影響を検証した室内実験の結果も併せて報告し、植食性昆虫における密度制御要因について考察する。


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