| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-482 (Poster presentation)
地上部植生から供給されるリターが形成する土壌有機物層は、ササラダニ類にとって主要な生息地として機能する。土壌有機物層が持つ物理的な構造はその構成物であるリターの物理的形質や化学的形質によって決定され、ササラダニ群集にとっての生息環境の質を左右する可能性がある。しかし、植物のリター形質が土壌有機物層の構造に与える影響および、土壌有機物層の構造がササラダニ群集に与える影響については十分に明らかでない。本研究では、葉形質の異なる樹種が優占する林分において土壌有機物層の構造を定量化することで、植物リター形質が土壌有機物層構造を通じてササラダニ群集構造に与える影響を明らかにすることを目的とした。
京都大学上賀茂試験地内において、葉形質の異なる樹種がそれぞれ優占する6プロット(アラカシ、コナラ、ソヨゴ、ツバキ、ネジキ、ヒノキ)から6地点ずつを選択し、各地点からササラダニ抽出用サンプルと有機物構造サンプルを採取した。土壌有機物構造については、土壌切片法を用いて作成した切片に対し画像処理を行うことで、構造を表現する示数(有機物層厚さ、孔隙率、特定径孔隙量)を抽出・定量化した。ここで、特定径孔隙とはササラダニ成虫の体幅からアクセス可能と考えられる径の孔隙を指す。葉形質として物理的形質(葉の形状、厚さ等)と化学的形質(タンニン、リグニン濃度等)を、環境変数として含水率を測定した。
解析の結果、ササラダニ群集は優占樹種によって有意に異なることがPerMANOVAにより示された。また、群集の構造は特定径孔隙量と含水率によって有意に説明されることが Bray-Curtis非類似度を用いたdb-RDAによって示された。以上の結果から、葉形質が異なる樹種に由来するリターの供給はササラダニ群集構造に差異をもたらしており、ササラダニ群集を規定する要因のうち、特定径孔隙はササラダニの微小な生息環境として重要な役割を果たしていることが示唆された。