| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-483 (Poster presentation)
群集構造を駆動するプロセスの理解は、群集生態学において中心的な課題である。種プールから、分散、偶然性によってある場所に到達した種のうち、その環境に適応できた種が生き残り(環境フィルタリング)、その後、共存可能な種が競争によって決定され、局所群集が成立する。環境フィルタリングが相対的に重要であれば、環境条件に耐えうる特定の機能的形質をもつ種が共存可能となる。この場合、これを「機能的凝集性」とよび、形質の多様性(機能的多様性, FD)が低い状態となる。一方で、競争が相対的に重要であれば、競争排除やニッチ分化により異なる機能的形質をもつ種が共存しやすくなる。この場合、これを「機能的過分散」とよび、FDが高い状態となる。
本研究では、トンボを対象に1)群集を構成する種の形質にどのような季節パターンがあるか、2) FDは季節変化するか、3)FDを規定する要因は何か、を検証した。
調査は2025年4月から10月にかけて、京都府東北部に位置する京都大学芦生研究林で行なった。調査、測定により種数―個体数データ、機能的形質データ、気象データを取得した。まず、種数―個体数データと機能的形質データから群集と形質の関係性をNMDSにより可視化した。また、標準化機能的多様性(FD_SES)を算出した。FD_SESが正の値であれば機能的過分散、負の値であれば機能的凝集性と解釈できる。そして、線形混合モデルによりFD_SESの変動を気温、日射量および種数で説明できるか検証した。
結果、群集構成は季節変化を示し、春、秋には特定の形質が偏り、夏は様々な形質が分散していた。また、FD_SESは季節の進行に伴い山型の変動を示し、環境フィルタリングと競争の相対的重要性の明確な季節変化が検出された。さらに、FD_SESの変動を規定する要因は気温と種数であった。
本研究は群集集合プロセスにおける環境フィルタリングと種間競争の相対的重要性が明確に季節変化することを実証した数少ない事例である。