| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-487  (Poster presentation)

安定同位体と脂肪酸を統合した新たな食物網解析:沿岸藻場群集への適用【A】
A new integrated model for food web analysis based on stable isotopes and fatty acids: Application to macroalgal communities【A】

*和田将佳(神戸大学), 山本貴史(海山川里株式会社), 藤林恵(九州大学), 末永慶寛(香川大学), 奥田昇(神戸大学)
*Masayoshi WADA(Kobe Univ.), Takafumi YAMAMOTO(Kaizansenri Inc.), Megumu FUJIBAYASHI(Kyushu Univ.), Yoshihiro SUENAGA(Kagawa Univ.), Noboru OKUDA(Kobe Univ.)

沿岸開発や気候変動に伴う海水温上昇により世界的な藻場面積の減少と多様性低下が進み,沿岸藻場の再生と保全は地球規模の課題となっている。しかし,低炭素社会への国際的関心の高まりから,近年の藻場研究では炭素貯留機能の評価が重視され,魚介類の揺籃場としての機能に関する知見が不足している。沿岸藻場の多様性と高次生産に至る栄養転送機能の関係を解明できれば,藻場の面積のみならず多様性を保全する社会-生態学的意義を示すことが可能となる。
炭素・窒素安定同位体に基づく食物網解析は,栄養転送機能を評価する従来的な手法として用いられてきた。しかし,基盤資源が多数存在する系では消費者の栄養位置の推定に不確実性が生じる。この欠点を補完するツールとして脂肪酸分析が有望である。脂肪酸分析は,生産者の各種分類群が特異的に合成する脂肪酸をバイオマーカーとして,動物体内に蓄積した分類群特異的脂肪酸種の組成から各種基盤資源を起点とした栄養経路の相対的重要性を評価するのに有効であり,多様な分類群で構成される海藻群落上に形成される食物網の解析に適する。本研究は,窒素安定同位体と脂肪酸の分析データを統合し,沿岸藻場群集の栄養経路を3次元的に可視化する新たなモデルの確立を目的とする。
本モデルを沿岸藻場群集に適用するにあたり,分類群特異的脂肪酸マーカーが確立していない海藻グループについて,まずは脂肪酸に関する文献データからメタ解析を行い,マーカー候補となる脂肪酸種を探索した。続いて,沿岸藻場群集に脂肪酸分析を適用した。これらの解析により幾つかの脂肪酸種が栄養経路のマーカーとして有効であることが確証された。最後に,藻場群落と葉上動物群集の脂肪酸組成に基づいて二軸平面座標上に各種基盤資源を起点とした栄養経路の相対位置をプロットし,動物種ごとに窒素同位体比に基づいた栄養位置を垂直座標上にプロットした3次元的な食物網を構築した。


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