| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-488  (Poster presentation)

河川のハビタット異質性が支える食物網構造と群集バイオマス【A】
Habitat heterogeneity shapes food-web structure and community biomass in a river【A】

*今川愛佑美(京都大学), 中川光(土木研), 佐藤拓哉(京都大学)
*Ayumi IMAGAWA(Kyoto Univ.), Hikaru NAKAGAWA(PWRI), Takuya SATO(Kyoto Univ.)

自然生態系にはしばしば、物理環境条件の異なるハビタットがモザイク状に配置されている。先行研究では、こうしたハビタットモザイクが局所的な群集構成や種のハビタット利用の違いを介して食物網構造に影響を与えることが示されてきている。一方で、河川における瀬―淵構造のような環境異質性のもとで、部分群集間のバイオマス構造とエネルギー流を統合的に解析し、食物網の維持機構を検討した研究は少ない。
そこで本研究では、2008–2009年に由良川上流で取得された底生無脊椎動物および魚類群集のハビタット利用とバイオマスデータを用いて(1)瀬と淵における部分群集の種構成の分化、(2)ハビタット間における栄養段階間のバイオマス構造の差異、(3)瀬から淵へのエネルギーフラックスの魚類群集バイオマス維持への寄与を検証した。(1)について、底生無脊椎動物の群集構造をNMDSで解析したところ、全月で瀬と淵の間に有意差があり、ハビタット特異的な部分群集が形成されていた。一方、魚類群集は多くの月で有意差が認められず、両ハビタットをまたいで利用していた。(2)について、底生無脊椎動物は全月で瀬の群集バイオマスが淵を上回り、魚類は全月で淵が瀬を上回っていた。(3)では、摂食関係と代謝速度に基づくFlux web解析により、魚類群集の摂取エネルギーの68–93%が瀬の底生無脊椎動物に依存していることが示された。さらに、淵で観測された魚類群集の推定摂取エネルギーは、淵で観測された底生無脊椎動物の推定摂取エネルギーを上回っていた。これらの結果は、瀬からの餌資源供給なしには魚類群集バイオマスの維持が困難であることを示唆する。
すなわちハビタット異質性は、生産に特化した瀬と捕食者が利用する淵との機能分化を可能にし、それらの空間的補完を通じて食物網全体のバイオマスを高く維持する機構として働いている可能性がある。


日本生態学会