| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-489 (Poster presentation)
生態系を取り囲むサウンドスケープは、人間活動により大きく変化しており、生物に大きな影響を与えている。その要因は、人為的な騒音から、外来生物の鳴き声、人間活動により行動を変化させた生物の鳴き声といったものまで、多岐にわたる。本研究では、人間活動がサウンドスケープを変化させた例として、セミ類によるサウンドスケープの変化と他生物への影響について検討を行った。セミ類は人工光などにより、都市部では夜間も鳴き声を発するように活動時間変化が起こっていると言われている。加えて、セミ類の鳴き声は大音量かつ周波数範囲が広いため、他種のコミュニケーションを妨害することが考えられる。そこで、本研究では、都市域におけるセミ類の活動時間変化の実態と、その変化が他生物の音響コミュニケーションに与える影響を明らかにすることを目的とした。東京都および神奈川県の都市地域(夜間明るい)および緑地地域(夜間暗い)において、レコーダーによる観測とラインセンサス調査によりニイニイゼミとアブラゼミの鳴き声を観測した。その結果、都市地域では夜間にも鳴き声を発する一方、緑地地域では夜間の鳴き声はほとんど観測されなかった。次に、鳴き声を発する生物の中でもコオロギ類マダラスズを対象に、セミ類の鳴き声がマダラスズの鳴く行動へ及ぼす影響を調べるため実験を行い、マダラスズの鳴き声チャープ数の変化の有無を観察した。その結果、都市地域で採集された個体ではニイニイゼミの鳴き声が、緑地地域で採集された個体ではアブラゼミの鳴き声がチャープ数を減少させることが示された。また、都市地域で採集された個体の鳴き声周波数は緑地地域で採集された個体より低く、体サイズによる影響も都市地域と緑地地域で異なる傾向が観察された。これらの結果は、都市環境におけるセミ類の行動変化が他生物の音響コミュニケーションに影響を及ぼし、地域ごとの音環境に応じた局所適応の存在を示唆するものである。