| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-491 (Poster presentation)
河川における堰堤やダムの建設は、流域を分断し、河川生態系に深刻な影響を及ぼす。特に回遊魚の移動阻害は、上流域における魚類相や生息密度を劇的に変化させる。また、魚類の食物となる水生昆虫は、主に藻類を摂食する一次消費者であり、その群集構造や個体数は藻類量と魚類からの捕食圧の両面から制約を受けている。本研究では、水生昆虫群集の定量的な解析により、河川横断構造物が魚類相の変化を介して河川生態系全体に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
調査は、北海道東部の小規模なダムが設置されている複数の河川で実施した。各河川のダム上下流に調査地点を設けて、水生昆虫の個体数およびバイオマスを定量化した。さらに、電気ショッカーを用いた二回除去法による魚類の生息密度の推定、およびクロロフィルa量から付着藻類の現存量の推定を行った。
いずれの河川においても、ダムより下流側には遡河回遊魚であるサクラマスの幼魚(ヤマメ)が高密度で生息しているのに対し、ダム上流側ではヤマメは皆無であった。一方、純淡水魚のフクドジョウは、ダムの上流側の方が高密度で生息する河川があった。ダム上下流において、水生昆虫群集の個体数とバイオマスを摂食様式の違いに基づいて機能摂食群(Functional Feeding Groups)に分類し、PERMANOVA解析を行った。その結果、ダムの上下流間において水生昆虫のバイオマスに有意差は検出されなかったものの、個体数については有意差が検出された。
機能摂食群ごとの水生昆虫の個体数を応答変数、各魚種の密度とクロロフィルa量を説明変数として冗長性分析(RDA)を実施した。その結果、底生魚のフクドジョウの密度が水生昆虫の群集構造に有意な影響を及ぼしていることが示された。特に、水生昆虫のうちの収集者(gatherer)とは負の相関関係が認められた。