| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-493  (Poster presentation)

野外での低線量放射線への曝露が線虫群集に及ぼす影響【A】
Effects of Low-Dose Radiation on Nematode Communities in the Field【A】

*原田匠(千葉大・院・理), 村上正志(千葉大・院・理), 石井伸昌(量子研)
*Takumi HARADA(Grad. Sci., Chiba Univ.), Masashi MURAKAMI(Grad. Sci., Chiba Univ.), Nobuyoshi ISHII(QST)

放射線は宇宙線や地殻由来の天然放射性物質によって生物が定常的に受ける不回避な環境ストレスである。高線量ではDNA損傷や細胞死を引き起こす一方で、低線量でも細胞ストレス応答を通じて成長や繁殖などの生活史形質に影響を及ぼす可能性が指摘されている。2011年の東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故では、自然界に存在する水準を大きく超える放射性物質が環境中に放出された。事故後14年が経過し除染や時間経過によって空間線量は低下しているが、半減期が約30年であるCs137については、森林土壌中での蓄積量は依然として自然レベルを大きく上回っている。しかしながら、原発由来の低線量放射線が野外生物へ与える長期的影響は十分に解明されていない。事故直後には、いくつかの生物種について、放射線による形態への影響が報告されたが、環境中の多様なストレス因子との相互作用を考慮した研究は少ない。低線量放射線の生物への影響は限定的であり、野外でこれを正確に評価するには適切な指標の選定が重要である。分子的指標は高感度である一方、野外では複数の環境要因が同時に作用することから個体レベルの変化のみから影響を抽出することは難しい。生物群集が生態学的指標として、さまざまなストレスを敏感に検出しうることは多くの研究で示されている。これは、群集中の多様な種が広範なアンテナとして機能し、また、群集は広範な生態系の応答を統合的に反映するため、より頑健な結果を示すためと言える。そこで本研究では、生態学的指標として土壌線虫群集に着目した。福島県内の森林15地点(高線量3箇所、中3箇所、低9箇所)から各3サンプル、計45地点分の土壌試料を採取し、ベールマン法により線虫を抽出・計数し、各サンプルからDNAを回収した。本研究ではメタバーコーディングにより種レベルで群集構造を解析する。得られた群集構造データを基に、放射線量に応答する群集構造指標の検出を目指す。


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