| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-495  (Poster presentation)

三宅島における植生群集の遷移がアリの垂直分布に与える効果【A】
The effect of forest succession on the vertical ant community in a Miyakejima.【A】

*中辻宏平(東京農工大学), 上條隆志(筑波大学), 吉田智弘(東京農工大学)
*Kouhei NAKATSUJI(TUAT Univ.), Takashi KAMIJO(Tsukuba Univrsity), Tomohiro YOSHIDA(TUAT Univ.)

 火山の噴火は生態系に激しいかく乱を与える。このような大規模攪乱からの生物多様性の回復プロセスを解明することは、生態学における中心的な課題の一つである。これまで、植生遷移に伴う動物群集の変化の研究は多いが、森林の三次元構造、特に林冠から林床に至る垂直階層間での回復パターンの差異に注目した研究は限られている。垂直階層間で群集組成が異なることが多く、垂直階層によって植生遷移から受ける影響が異なるかもしれない。本研究では、林冠と林床の両階層を利用するアリ類を指標とし、三宅島における2000年に起こった火山攪乱後の植生遷移が動物群集の回復パターンに与える影響を垂直階層別に検証した。
 野外調査は東京都三宅島において2025年5月に実施した。攪乱後の遷移段階が異なる草原、低木林、成熟林の合計27地点で調査を行った。各地点の林床および林冠(2~10m)に餌誘引トラップを設置しアリ類を採集した結果、全体で3亜科24種が確認された。解析の結果、遷移段階間での種数に有意な差は認められなかったが、垂直階層間では林冠の種数が林床よりも有意に少なかった。さらに、群集組成が植生遷移から受ける影響は垂直階層によって異なっていた。林床では樹木群集の遷移に伴う群集変化が示された。一方、林冠では草原と森林(低木林、成熟林)の間で異なる群集構造を持ち、林床で見られたような森林形成後の遷移に伴う組成の変化は認められなかった。これらの結果は、三宅島におけるアリ群集の回復プロセスが垂直階層によって異なることを示唆している。林床群集が植生構造の変化に敏感に反応して遷移が進むのに対し、林冠群集は遷移の初期段階から特定の種群によって安定的に構成される可能性が高い。林冠は林床よりも環境フィルターが厳しいため限られた種が営巣、訪問していたと考えられる。


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