| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-496 (Poster presentation)
島嶼生態学の古典理論は本土から島の結びつきを前提にしているが、隣接島間の繋がりも島の生物群集に影響を与えると言われている。群島で繁殖する生物は本土に近い島を繁殖地に加え中継地として「飛び石」的に利用するが、飛び石として機能する島の地理的条件や、移動パターンの種間差は未解明である。本研究では、群島における渡り鳥の時空間的な移動パターンの解明を目的に、伊豆諸島で繁殖する鳥類を対象に受動音響モニタリングを用いて鳴き声を記録した。録音は、2025年3-6月に各7島(大島、新島、神津島、三宅島、八丈島、八丈小島、青ヶ島)の森林内の2-5地点で実施した。イイジマムシクイ、キビタキ、ホトトギスを対象とした動的サイト占有モデル解析の結果、移動パターンに種間差があった。主に伊豆諸島南部で繁殖するイイジマムシクイは、4月以降に三宅島以南で高い占有確率を維持した一方、北部の神津島で一時的に占有確率が上昇し、北部の島が繁殖地に加えて渡りの中継地機能を有することが示唆された。本土が主な繁殖域であるキビタキは、本土に近い北部の島々のみで5月中旬に一時的な占有確率の上昇が見られた。これは、北部の中継地利用を示唆している。一方、全島で繁殖するホトトギスにおいて、5月中旬に全島でほぼ同時に占有確率が上昇し、高水準を維持したことは、飛び石的な移動をせずに各島へ直接飛来する可能性を示している。群集レベル解析では、種組成の入れ替わりの指標 βsim 用いた解析を行った結果、高隔離度ほど種組成の入れ替わり頻度が低くなる傾向があった。これは飛び石として機能する島は本土に近い島に位置することを示唆している。以上の結果は、渡りの際の島間の繋がりを実証的に示している。イイジマムシクイのような島嶼固有の種を含めた島の生物多様性の保全には、特定の島だけでなく、中継地利用される島を含めた群島全体での包括的な保全策が必要である。