| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-497 (Poster presentation)
農地の圃場整備および耕作放棄は、生物多様性に大きく影響することが知られている。しかし、これらは時期をずらして同所的に発生することがある。これまでも圃場整備および耕作放棄が農地の生物多様性に及ぼす影響を評価する研究は多々実施されてきたが、圃場整備による影響と耕作放棄による影響が混同されてきた可能性がある。本研究ではクモを指標に、圃場整備と耕作放棄が農地の生物多様性に与える影響を切り分けて評価することを目的とした。東京都町田市および神奈川県相模原市周辺の4つの農地において、圃場整備を経た営農水田・放棄水田、圃場整備を経ていない営農水田・放棄水田という4タイプを対象に、営農前、営農中、営農後期の3時期に分けてクモの調査を実施した。各区画で採集されたクモの種数および個体数に圃場整備、耕作放棄、およびその交互作用が及ぼす影響の評価ならびに、群集構造の変動を検討した。その結果、営農前にあたる第1回調査では種数および対数に対し圃場整備が負の関係、圃場整備と耕作放棄の交互作用が正の関係を示したことに対し、営農中、営農後期にあたる第2回・第3回調査では耕作放棄、圃場整備および交互作用と種数、個体数に有意な関係は確認されなかった。群集構造の分析からは、第1回調査から第2回調査にかけてクモの群集構造が大きく変化すること、第2回調査以降は営農水田と放棄水田の群集構造が類似してくることが示された。これらの結果は、圃場整備が本来クモ群集に負の影響を持つこと、ただしその効果は営農活動によって緩和されること、耕作放棄も同様の効果を持つことを示唆する。圃場整備と耕作放棄が生物多様性に及ぼす影響は静的なものではなく、季節や営農活動に応じて動的に変化するものであることが明らかとなった。