| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-498  (Poster presentation)

地表徘徊性甲虫に便乗するダニ群集における種多様性の維持過程【A】
The Process Maintaining Species Diversity in the Community of Phoretic Mites Associated with Ground Beetles【A】

*橋本久遠, 池田紘士(東京大学)
*Kuon HASHIMOTO, Hiroshi IKEDA(The University of Tokyo)

ある生物が他の生物に一時的に付着して移動分散を行う便乗という関係は、自力での移動能力の低い種では一般的にみられる。1個体の宿主に複数種が便乗する例も多く、宿主上には複数の便乗する種からなる群集が形成されている。しかし、便乗を行う生物の群集には不明な点が多く、環境や季節、宿主の生態・形態などの様々な要因によってその構成が決まると考えられるが、これらの要因との関係を野外で包括的に調査した例は乏しい。本研究ではダニとの間に便乗の例が多く知られ、生態・形態の多様性も高い地表徘徊性甲虫を宿主として扱い、便乗するダニの群集構成と、この群集構成に影響する要因を調べた。関東の2つの地域でそれぞれ2つの環境(林地と草地)で調査を行い、冬季採集(3月)と年4回(4,6,8,10月)のピットフォールトラップにより地表徘徊性甲虫を採集した。実体顕微鏡下でダニの大まかな種同定と付着種数・個体数の確認、甲虫の種同定と形態観察を行い、その後、光学顕微鏡下でダニの最終的な種同定を行った。その結果、採集された甲虫成虫100種幼虫5種計1369個体のうち391個体から、36種4955個体のダニが確認された。地点・月ごとのダニの総種数は甲虫の種数が多いほど多かった。また、宿主甲虫個体ごとのダニの種数は腐肉・糞食と肉食の宿主、及び飛翔筋の無い宿主で有意に高かった。宿主個体ごとのダニの種構成は、宿主の食性、繁殖時期、後翅と飛翔筋の有無、体サイズによって有意に異なっていた。これらのことから、宿主の多様な生態・形態によって形成される多様なニッチに合わせて各ダニ種が便乗し、多様な群集パターンが形成されていることが明らかにされた。さらに、同一甲虫種間でも環境(林地、草地)や地域、季節間でダニの種多様性・種構成が異なる例も複数認められ、こうした空間・時間的なニッチの差異も便乗性ダニの種多様性の維持に関与していると考えられる。


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