| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-500 (Poster presentation)
植物寄生菌によって植物体に形成される菌えいの組織は植物と菌類の複合体であり、肥大成長の初期から胞子を放出して枯死するまでの過程で、その構成要素を劇的に変化させていく。そのため、菌えいを発生基質とする昆虫類は、菌えいの成長段階に応じて異なる食性のものへと移り替わっていくことが予想される。そこで本研究では、植物寄生性の担子菌Laurobasidium hachijoenseによってヤブニッケイの樹皮に形成される菌えい(ヤブニッケイもち病)を対象に、菌えい上に成立する昆虫群集のターンオーバーがそれらの潜在的な食性によって説明できる可能性を検証した。
伊豆諸島の八丈島において、2025年5月〜2026年1月の間、複数回にわたって菌えいを採取し、実験室下で発生した昆虫を捕集した。各昆虫は形態およびDNAバーコーディングによって同定し、既知の食性情報から菌食者、植食者、および腐食者などに分類した。
集計の結果、菌えいサンプルから計5目約20種の昆虫が得られたが、昆虫群集は時期によって大きく異なっていた。それらのうち、植食者は菌えい形成の最初期にのみ見られた。菌食者は全期間を通して見られた。腐食者は菌えいが枯死・乾燥する発生後期に多く見られた。この時間変動に主に寄与していたのは鱗翅目群集の変動だった。以上のことから、菌えい上の昆虫群集のターンオーバーは、利用可能な資源の構成変化に応答していると考えられた。本発表ではさらに、各昆虫の生活史についても踏まえ、菌えい上での昆虫の群集動態について議論する。