| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-501 (Poster presentation)
樹洞は森林における重要な微小生息場所であり、鳥類・哺乳類・昆虫など多様な生物に利用される。しかし、その供給は老齢木や一次営巣者に依存するため、人工林では不足しやすい。本研究は樹洞の代替として巣箱を設置し、(1)繁殖利用(営巣)と(2)訪問利用(巣箱表面に残る鳥類eDNA)を調べ、営巣場所選好と潜在的利用者を推定した。
東京大学北海道演習林において、巣箱密度、入口直径・方位、林分型(針葉樹林/広葉樹林)を変えて巣箱96個を設置した。営巣場所供給量の指標として林道から目視で樹洞探索を行い、周囲樹洞数を算出した。4月末~7月末に週1回、巣箱内部を観察し、繁殖状況を記録した。また、巣箱設置による鳥類群集への影響を検証するため、4月・6月に林道上の複数地点で定点調査した。eDNAは全巣箱の入口および内壁から採取し、MiBird(12S rRNA領域)でPCR増幅後、メタバーコーディング解析を行い、BLASTにより種同定した。指標として全ASV(amplicon sequence variant)数・Shannon多様度、カラ類ASV数・割合を算出し、営巣の有無はロジスティック回帰、eDNA指標は重回帰、群集構造はNMDSおよびPERMANOVAで評価した。
カラ類の営巣は7件、クロスズメバチ属の営巣は20件確認された。営巣は巣箱密度や周囲樹洞数とは明確に関連せず、広葉樹林かつ周囲営巣数が多い場所で多い傾向があった。入口直径はカラ類・ハチの双方で正、入口方位(西~南向き)は負の効果を示した。eDNAでは営巣種以外も検出され、全ASV数と多様度は広葉樹林で高く、針葉樹林ではカラ類ASV割合が相対的に高かった。鳥類群集は巣箱設置の影響に比べて季節の影響が強かった。
以上より、天然林では営巣場所供給は飽和している可能性があり、巣箱密度の短期的変化の効果は限定的で、巣箱の構造と設置環境は繁殖利用と訪問利用に異なるフィルタとして働く可能性が示唆された。巣箱は繁殖場所にとどまらず、鳥類の一時的利用を含む微小生息場としての機能も担うと考えられる。