| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-508  (Poster presentation)

都市部の城跡でのカンサイタンポポの種子散布形質減退仮説の検証【A】
Reduced Seed Dispersal of Taraxacum japonicum in Urban Castle Ruins.【A】

*中田枝佑(鳴門教育大学), 渡邊幹男(愛知教育大学), 田川一希(鳴門教育大学)
*Shu NAKATA(Naruto University of Education), Mikio WATANABE(Aichi University of Education), Kazuki TAGAWA(Naruto University of Education)

理論的には、種子散布の利益とコストのバランスで、周辺が生育不適地に囲まれた閉鎖環境では、自然選択によって種子散布形質減退の進化が起こると予想されている。これまで、周辺が海に囲まれた島でこうした進化が起こることが実証されてきた。島と類似の環境として都市部の緑地が挙げられる。しかし、都市環境での実証例はほとんどない。そこで本研究では、田舎に生育するカンサイタンポポと比較して、都市部の城跡に生育するカンサイタンポポの方が、種子の冠毛体積が小さく、痩果が大きくなることによって、種子散布の距離が短くなるという種子散布形質減退の進化が起きているか検証することを目的とした。
調査は、都市部の城跡の大阪城と、田舎の大阪府泉北ニュータウンと徳島県鳴門市島田島で行った。各調査地でカンサイタンポポ15個体を選び、各個体から10~15個の成熟した散布体を採取した。冠毛や瘦果の形態を測定し、冠毛体積、瘦果体積、散布指数を算出した。これらの指標について、一般化線形混合モデル(GLMM)を用いて解析した。
その結果、都市部の城跡に生育するカンサイタンポポでは、田舎と比較して冠毛体積が小さい傾向が見られた。一方で、瘦果体積、散布指数については、都市部と田舎の間に有意な差は見られなかった。本研究の結果は、都市部の城跡という閉鎖環境において、種子が遠くへ散布されることのコストが高まり、散布能力が低下する方向への進化が進行している可能性を示している。


日本生態学会