| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-509 (Poster presentation)
山陰地方の固有種であるドジョウ科シマドジョウ属サンインコガタスジシマドジョウ Cobitis minamorii saninensis は,1950年代からスジシマドジョウ小型種の点小型や山陰型として認知され,2012年に島根県斐伊川水系が基準標本産地の新亜種として登録された.一方,シマドジョウ属の系統分類は混乱しており,コガタスジシマドジョウ類は,本亜種の他に基亜種のサンヨウC. m. minamorii,トウカイC. m. tokaiensis,ビワC. m. oumiensis,ヨドC. m. yodoensisの地域亜種が存在する.本研究では,サンインC. m. saninensisを系統分類学的に検証するため,ミトゲノム全長を比較解析した.2024年4月に鳥取県日野川水系で採集した雌成体からゲノムショットガンライブラリを構築し,超並列塩基配列解読で16,628 bpのミトゲノム全長を決定した.ミトゲノム全長がGenBank登録済みのサンヨウAP013309の16,645 bpとトウカイAP013305の16,641 bpからそれぞれ17 bpと13 bp短かく,塩基置換率はそれぞれ5.64%と5.38%で比較的高かった.本亜種のミトゲノムは,転写開始点の調節領域D-loopの他にタンパク質遺伝子13個,RNA遺伝子2個およびtRNA遺伝子22個をコードしており(ND6とtRNA遺伝子8個はマイナス鎖),遺伝子配置はAP013309およびAP013305と共通であった.さらに,シマドジョウ属のミトゲノム全長の最尤系統樹では,本亜種はAP013309およびAP013309と同じクラスターに分布し,これら3亜種は単系統であることが示唆された.本亜種は島根県東部から兵庫県最西部に限定的にしか分布せず,環境省レッドリストでは絶滅危惧1B類に指定されていて積極的な保全が必要であり,その正確な生息実態の把握が喫緊の課題である.