| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-510  (Poster presentation)

スモールアイメダカ野生個体の交配実験と背地反応【A】
Mating experiments and background response of wild-type small-eye  Medaka.【A】

*菅道大(島根大学), 守岡里穂(島根大学大学院), 荒西太士(島根大学学術研究院)
*Michihiro SUGA(Shimane University), Riho MORIOKA(Shimane University GSNST), Futoshi ARANISHI(Shimane University IALS)

日本固有の淡水魚であるミナミメダカOryzias latipesは、環境省レッドリストで絶滅危惧Ⅱ類に指定されている一方、特異な形質の観賞用品種が人為的に作出されている。眼の形態異常で黒目が委縮する形質のスモールアイ(SE)は、発生過程における眼球の形成不全が原因とされているが、SEの遺伝機構は明らかになっていない。2025年6月に島根県雲南市の斐伊川水系で採集した野生のミナミメダカ合計127個体の内、雌1個体の左眼にSEを確認した。そこで、SE雌を同時に採集した正常眼(NE)の雄と交配した結果、受精卵94個から65個体が孵化し、最終的に7個体がF1群として生残したが、SEは出現しなかった。SE雌とNE雄の交配の孵化率と生残率は、同時に採集したNEペアの交配と有意差はなかった。一方、メダカには、光刺激に反応して色素胞を拡散または凝集させ、背景色に体色を適応させる保護色機能(背地反応)が備わっている。視力に障害があるSEは外光の認識機能が劣っており、体色の黒化や背地反応の遅延が報告されている。SE雌とF1群ともに体色の黒化は視認されなかった。そこで、各個体を黒背景から白背景および白背景から黒背景へ移動させて体色変化の完了までの時間を計測し、外光の認識機能を定量評価した。試験群はSE雌とNE雄およびF1群の合計9個体として、同時に採集したNEの20個体を対照群とした。7回の背地反応試験の結果、両方向でSE雌はNE雄や対照群より有意に遅延した。また、SE雌の遅延は、黒から白ではF1群とも有意差があったが、白から黒ではF1群の1個体と有意差がなかった。以上の結果から、SE雌とNE雄の交配試験ではF1群にSEの形質は遺伝しなかったが、背地反応の遅延の形質は1個体に遺伝したと推察された。今後は累代交配によるSEの出現や背地反応の遅延の固定および両形質の遺伝機構に関わる要因を検討する。


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