| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-514  (Poster presentation)

地下性甲虫Trechiama属における地下適応形質 特に光受容機能に着目した多様性【A】
Diversity of Subterranean Adaptive Traits with Focus on Photoreceptive Function in the Genus Trechiama【A】

*松本陸, 黒田啓太, 中野隆文(京都大学・院理)
*Riku MATSUMOTO, Keita KURODA, Takafumi NAKANO(Kyoto Univ., Grad. Sch. Sci.)

生物が地下環境へ進出する過程を理解するうえで、地表環境と洞窟環境(地下深層)の中間に位置づけられる地下浅層環境に生息する種は、より深部の地下環境へ進出する過程を反映した進化的中間段階に相当する可能性があるとして注目されている。
地下性甲虫Trechiama属(コウチュウ目:オサムシ科:チビゴミムシ亜科)は、北海道から九州までの日本列島各地に分布し、これまでに100種以上が知られている。本属は、地表性から地下環境へ進出したと考えられる種を含み、地表環境から地下浅層、さらに洞窟環境に至るまで多様な環境に生息している。したがって、本属は地下環境への進出過程を考えるうえで適した研究対象である。本属内では、複眼の退化の程度に種間差があることが知られている。有眼である地表性種に比べ、地下環境に生息する種の複眼は痕跡化など退化傾向にある。しかし、地下浅層と洞窟という地下環境間での退化傾向の差異は十分に調査されていない。地下浅層は洞窟と異なり、地下性昆虫が土砂崩れや降雨によって一時的に地表環境へ曝されうる環境である。したがって、地下浅層種の複眼はより軽度の退化傾向を示すかもしれない。実際、地下浅層種T. kuznetsoviの退化傾向を示す複眼は、ゲノム解析および組織学的研究により、視覚関連遺伝子の一部は発現していないものの、光受容機能を保持している可能性が示唆されている。地下浅層種において痕跡化した複眼が光受容機能を有することは、本属における地下進化過程を考察するうえで、複眼の多様な退化的形質状態が重要な手がかりとなる可能性を示している。しかしながら、地下浅層種が光刺激に対して実際に反応を示すかどうかについては、十分に検証されていない。
本研究では、地下浅層および洞窟性種を中心にTrechiama属の複数種を対象として、面積や側面の構造など複眼の形質状態を中心に比較を行うとともに、行動実験により光刺激に対する反応を調査し、複眼の形質との関連について議論する。


日本生態学会