| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-515 (Poster presentation)
繁殖をめぐる争いによって生じる性淘汰は、性的形質の多様化をもたらす。顕著な多様化を示す性的形質である交尾器形態は種分化にも関わることから、交尾器形態の多様化機構の解明は、生物多様性の創出、維持機構の解明に寄与する点で重要である。性的形質が緯度に沿って多様化する緯度クラインは,性淘汰が環境依存的に働いた結果生じたと考えられるが,交尾器形態に緯度クラインを検出した研究はいまだ少なく、そのメカニズムに関する研究は未だない。そこで本研究は、朝鮮半島に生息しているツヤオサムシ亜属の雄交尾器での緯度クラインを検出し、その進化メカニズムにおける性淘汰の影響を調べた。
緯度と雄交尾器サイズの関係を調べるために体サイズの影響を考慮した重回帰分析を行った結果、低緯度地域でより交尾器が大きくなる負の緯度クラインが観測された。また、雄交尾器サイズの集団間変異に基づく進化的アロメトリーを評価した結果、回帰直線の傾きが1よりも大きく、正のアロメトリーが観測された。このことは交尾器サイズが体サイズよりも早く進化したことを示している。
観測された雄交尾器サイズの緯度クラインが、緯度に応じて変化する温度環境に依存した性淘汰圧によって形成された可能性を調べるために、精巣サイズを精子競争による性淘汰圧の指標として用い、雄交尾器サイズとの関連を解析した。精巣の季節依存的なサイズ変動を考慮した重回帰分析を行った結果、気温と性淘汰圧の間に有意な関連は見られず、また、性淘汰圧と交尾器サイズの間にも有意な関連は見られなかった。
以上の結果より、精子競争によって生じる性淘汰は温度環境に依存せず、また雄交尾器サイズの緯度クラインの原因ではないと考えられた。よって、検出された雄交尾器サイズの緯度クラインの要因を解明するには、雌雄間の性淘汰を考慮したさらなる研究が必要である。