| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-517 (Poster presentation)
種分化は生物の多様化に関わり,生殖隔離の成立はその基盤である.種ごとに特徴的な交尾器形態を持つオオオサムシ亜属は,交雑帯において交尾器形態の不一致が接合前の機械的隔離をもたらすことで知られている.一方,機械的隔離に関わるような特徴的な交尾器部位を持たないクロナガオサムシ亜属は,生殖隔離の研究が遅れている.先行研究では,クロナガオサムシとオオクロナガオサムシの側所的な分布と狭い交雑帯が報告され,2種間に生[隆間1.1]殖隔離が生じている可能性が示唆された.また,これら2種の姉妹種であるシコククロナガオサムシは,他種と二次的接触がなく,生殖隔離は明らかになっていない.そこで,本研究はこれらクロナガオサムシ亜属近縁3種を対象に,集団遺伝学的解析と交尾行動実験を統合し,生殖隔離の実態を明らかにすることを目的とした. クロナガとオオクロの交雑帯における集団遺伝学的解析の結果,遺伝的な交雑が確認され,交雑集団では両親種個体に加えてF₁,F₂雑種個体が検出された.また,交雑集団は純系集団と比べて連鎖不平衡が有意に高く,精巣サイズの縮小と成熟卵数の減少が確認されたため,2種間には雑種個体の繁殖力低下による接合後隔離が生じている可能性が示唆された.また,先行研究との比較により,交雑帯が[隆間2.1]オオクロ側へ移動していることが明らかになった.この原因として,交雑帯においてクロナガが交雑しにくい可能性を検討するため,純系クロナガと交雑集団を用いた交尾実験による接合前隔離の検証を行ったが,接合前隔離の証拠は得られなかった.同様に,クロナガとシコクの交尾実験においては,クロナガのオスとシコクのメスのペアにて交尾時間が有意に長かったが,授精には影響がなく,接合前隔離の証拠は得られなかった.以上の結果は,オオオサムシ亜属とは異なり,クロナガオサムシ亜属では接合前隔離はほとんど成立しておらず,接合後隔離が主要であることを示唆する.