| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-518  (Poster presentation)

温度に依存した個体群密度の変化と交尾器形態の表現形可塑性【A】
Temperature-dependence in population density and phenotypic plasticity in genital morphology【A】

*谷川健太, 高見泰興(神戸大学)
*Kenta TANIKAWA, Yasuoki TAKAMI(Kobe Univ.)

昆虫の雌雄交尾器形態のマッチングは交尾成功に影響し,極端な形態は淘汰されるため,交尾器形態の種内変異は相対的に小さいと考えられている.交尾器形態変異の要因の1つに,環境の変化に応答して形質が非遺伝的に変異する表現型可塑性が考えられる.餌ストレスや温度変化などの実験操作によって昆虫の体サイズや角などの性的形質が変化することを調べた研究はしばしば見られる.しかし,交尾後性淘汰に関わる交尾器形態の表現型可塑性に関する研究は少ない.
雌雄交尾器のミスマッチを引き起こす交尾器形態の変異は交尾成功に負の影響を及ぼすという点から,交尾器形態の表現型可塑性についていくつかの仮説が考えられる.まず,環境変動により交尾器形態が変異しやすいと,雌雄間でミスマッチが生じやすくなり,交尾成功が低下しやすくなるかもしれない.この仮説が正しければ,交尾器形態を安定させる方が有利となり,他の形質よりも表現型可塑性が小さくなると予測される.また,個体群密度が低下する不適な環境では,個体間の繁殖をめぐる競争である性淘汰が弱まるため,交尾器への投資が減少し他の形質へ分配されることで,他の形質に比べて交尾器が小型化するかもしれない.この仮説が正しければ,交尾器のサイズと表現型可塑性の大きさは,環境に依存して変化すると予測される.
本研究では,種特異的な雌雄交尾器形態のマッチングをもつことが知られているオオオサムシ亜属の幼虫を異なる温度条件下で飼育し,成虫における交尾器形態の変異と交尾行動への影響を検討した.低温条件では死亡率が上昇したため,自然条件下では個体群密度が低下しうる不適な環境であると考えられた.そこで本研究では,温度条件とそれに伴う個体群密度の変化が,交尾器形態の表現型可塑性に及ぼす影響を幾何学的形態測定学的手法により解析し,交尾成功への影響を交尾実験によって解析することで,先述の仮説を検証した.


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