| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-519 (Poster presentation)
未利用資源や未占有ニッチへアクセスし生態学的機会を得た系統は、しばしば適応放散にみられる急速な系統的分岐と生態的・表現型的多様化を示す。生態学的機会を得た多くの系統では集団サイズが増加することが知られており、これは種内競争や自然選択に影響するため、適応放散を促進すると考えられてきた。しかし実際に適応放散をとげた系統で過去の集団サイズ変遷を復元し、生態学的機会との関連を議論した例は少ない。Oxera属は孤立した島嶼であるニューカレドニアに約500万年前に到達し、複数の生態学的機会を経験しながらその後35種に適応放散したシソ科の木本植物である。祖先形質からOxera属植物は乾燥適応系統と湿潤適応系統に分けられる。ニューカレドニアへの移入は生態学的機会として両系統の放散に影響したことが推察される。また、ニューカレドニアで約300万年前から始まった乾燥化は乾性低木林を拡大させ、特に乾燥適応系統に新たな生態学的機会を提供した可能性がある。本研究では、Oxera属植物の26種を対象に全ゲノムリシーケンスを行い、系統関係と生育環境に関する祖先形質を推定するとともに、過去の有効集団サイズ(Ne)の変遷を推定し系統間で比較した。その結果、湿潤適応系統と乾燥適応系統はニューカレドニア産種群における最基部で分岐した相互単系統の関係であった。湿潤適応系統では島への移入後かつ乾燥化以前にNeが拡大していた一方、乾燥適応系統では乾燥化の開始時期以降にNeの拡大がみられた。乾燥適応系統の分岐年代は湿潤適応系統より遅く、両系統の主要な分岐年代はNe拡大期と整合的であった。これらの結果は、Oxeraの両系統にはそれぞれ異なる時期に集団サイズ拡大期が存在し、湿潤適応系統では島への移入、乾燥適応系統では乾燥化という、異なる生態学的機会に起因していることを示唆している。