| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-524  (Poster presentation)

ヤマトシロアリ補充女王におけるヘテロSNP集中領域の解析とその生態的意義【A】
Heterozygous SNP-rich regions and gene functions in neotenic queens of Reticulitermes speratus【A】

*荒木聡司(京都大学), 高橋迪彦(産総研), 松浦健二(京都大学)
*Soshi ARAKI(Kyoto Univ.), Michihiko TAKAHASHI(AIST), Kenji MATSUURA(Kyoto Univ.)

組換えは,新規ハプロタイプの創出や選択効率の向上を通じて適応進化を促進し,有害変異の蓄積を抑制する重要な進化的過程である.したがって,組換えがゲノム上のどの領域で生じ,どのような機能的遺伝子群と結びついているのかを明らかにすることは,適応進化の遺伝的基盤を理解する上で重要である. ヤマトシロアリの補充女王は末端融合型オートミクシスによって生産され,極めて高いホモ接合性を示す.その一方で,特定のゲノム領域にはヘテロ接合で維持されるSNP(ヘテロSNP)が存在する.この特徴は,組換えが生じた領域を間接的に推定できる稀有なモデル系を提供する.
 本研究では,補充女王10個体の全ゲノムデータを用いて,共通してヘテロSNP密度が高い遺伝子を特定した.その結果,これらの領域には免疫応答,代謝,解毒に関わる遺伝子が多く含まれていた.さらに,ヘテロSNPのゲノム上の分布パターンは個体間およびコロニー間で一貫していた. これらのヘテロSNPは非同義置換を伴っており,組換えが保持される遺伝子領域は,病原体圧や環境変動といった不安定な環境条件への適応に寄与している可能性がある.
 本研究は,高度にホモ接合化した単為生殖ゲノムを利用することで,組換えの空間的分布と機能的遺伝子群との関連を明らかにし,組換えが適応進化に果たす役割を理解するための新たな視点を提示する.


日本生態学会