| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-527 (Poster presentation)
島嶼部に生息する動物では、形態上、行動上、個体群動態上、生活史上における変化が確認されており、それが分類群内で広く共通して起こるというアイランドシンドローム仮説(IS仮説)が提唱されている。鳥類で見られるIS仮説に即した変化として、体サイズや嘴サイズの中間サイズへの収束などが指摘されており、その要因として様々な島嶼環境が検討されてきた。しかし、そうした変化が見られる条件やそのメカニズムの理解は不十分である。特に、先行研究で調査対象となってきた島嶼の多くは大陸との陸橋形成履歴のない海洋島であり、陸橋形成の有無などの視点は十分に考慮されてこなかった。
日本列島は過去に大陸との陸橋形成を経験した島嶼と、経験していない島嶼を含む地域であり、環境の異なる島嶼間での進化パターンの比較には適した地域である。そこで本研究では、日本本土と島嶼の双方に生息する鳥類について仮剥製の外部形態を計測し、地域間で比較した。島嶼としては伊豆諸島を中心に日本の島嶼を広く調査対象とした。対象種としては、仮剥製が十分量確保できる普通種10種を選定した。計測箇所は跗蹠、嘴峰、嘴高、嘴幅の4か所で、跗蹠長を体サイズの指標として、嘴の計測値から計算した嘴の表面積を嘴サイズの指標として用い、種ごとに地域差を比較した。
その結果、種ごと、地域ごとに異なる外部形態の変化の様相が見られ、一概に島嶼で共通した変化が起こるわけではないことがわかった。ヤマガラでは陸橋形成履歴のない島嶼でのみ顕著な形態変化が確認され、大陸との陸橋形成履歴のある地域では本土との有意な形態差は確認されなかった。本研究の結果は、IS仮説を検討する際、大陸との陸橋形成履歴の異なる島嶼を一括して扱うことの問題を示唆している。島嶼における形態変化を引き起こすものとして、陸橋形成の有無などに関連した隔離の程度や生物環境の差など、さまざまな要因を検討する必要性が示された。