| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-528  (Poster presentation)

縮約ゲノム法に基づくアベハゼとイズミハゼの交雑を伴う遺伝的集団構造【A】
Genetic population structure and hybridization between Mugilogobius abei and Mugilogobius sp. 1【A】

*北尾圭梧, 三内悠吾, 渡辺勝敏(京大院理)
*Keigo KITAO, Yugo MIUCHI, Katsutoshi WATANABE(Kyoto Univ.)

交雑帯は,遺伝的に異なる集団の二次的接触によって遺伝子交流が生じている地域であり,生殖隔離の進化機構や交雑に伴う遺伝的・形態的な多様性の創出過程,分布域形成史などを追究できる進化生物学上重要な系である.アベハゼMugilogobius abeiとイズミハゼMugilogobius sp. 1は,前者が日本国内では種子島以北に,後者が南西諸島に異所的分布する姉妹種とされている.一方で,西南日本沿岸域(九州周辺の分布境界域や紀伊半島南部)において,両種の中間的な斑紋の個体(中間型)と両系統のmtDNAタイプが出現することから,種間の交雑帯の存在が示唆されている.本研究では,日本国内のアベハゼ属魚類2種の遺伝的集団構造と交雑履歴の把握により,両種の分布域形成史を推定することを目的とした.本州から沖縄島の30地点で得た計237個体のアベハゼ・イズミハゼからMIG-seq法によるゲノムワイド一塩基多型データ(約1,200 SNPs)を取得し,各種集団遺伝解析に供した.中間型が出現する地域の個体は,PCA解析ではアベハゼとイズミハゼの中間に位置し,ADMIXTURE解析では両系統の遺伝的要素を併せもっていた.さらにD統計量においてもイズミハゼ系統からアベハゼ系統への有意な遺伝子浸透シグナルが検出されたことから,中間型の出現地域はアベハゼとイズミハゼの交雑帯だと考えられた.アベハゼでは,複数の沿岸性魚類で知られるような日本海―太平洋間での明瞭な分化がみられなかった一方で,東シナ海周辺に独自の遺伝的要素が見いだされた.西南日本沿岸域におけるアベハゼとイズミハゼの交雑帯の存在は,トカラギャップなどの地理的障壁によって南北に分化したとされている他の多くの分類群においても,二次的接触等を含む複雑な進化・分布域形成パターンがみられる可能性を示唆する.


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