| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-530 (Poster presentation)
雄の交尾器形態は急速に多様化することが知られているが,雌交尾器の進化に関する研究は遅れている.しかし雌雄交尾器形態の進化・多様化機構を明らかにする上で,雌交尾器形態の多様性の把握や,多様化に関わる雌雄交尾器の相互作用を研究することは重要である.
オオオサムシ亜属は雌雄交尾器形態が多様化しており,交尾器形態進化の研究が進んでいる分類群の一つであるが,この分類群においても雌交尾器の研究は比較的遅れている.事実,雄交尾器の交尾片が挿入される雌交尾器の膣盲嚢の開口部前後が硬化することがあるが,その形態の多様性は明らかになっていない.また,一部の種においては交尾の際,雄が精包形成開始までに長時間を要することも報告されている.精包形成の遅れは,交尾中断により授精失敗の可能性を高める点で雄にとって不利であるため,雄交尾器の挿入や精包形成に対する雌交尾器関与の可能性を示唆する.しかし,オオオサムシ亜属における雌交尾器の機能や進化機構は十分に理解されていない.
そこで本研究では,まずオオオサムシ亜属の雌交尾器の形態的多様性について明らかにすることを目的に,雌交尾器における膣盲嚢開口部後方のキチン化した部位(膣後部板)について,その形態の種間変異と雄交尾器形態との関連を調べた.結果,雌交尾器の膣後部板において,形態が多様化していることが明らかになり,この膣後部板の形態は,雄交尾器形態と共進化している可能性が示唆された.加えて,交尾時の雌雄相互作用から雌交尾器形態の機能や進化機構を明らかにすることを目的に,交尾中断実験によって各種の精包形成のタイミングを推定した.結果,多くの種おいて精包形成が交尾時間の後半に偏っていることが明らかになり,雌雄交尾器形態の共進化において雌雄間の交尾器結合をめぐる相互作用が関与している可能性が示唆された.