| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-532  (Poster presentation)

部分免疫を考慮した空間個体ベースSIRIモデルの数理的解析【A】
Mathematical analysis of spatial individual-based SIRI model with partial immunity【A】

*乕松佳歩, 高須夫悟(奈良女子大学)
*Kaho TORAMATSU, Fugo TAKASU(Nara Women's University)

近年、急速なグローバル化の進展により、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)をはじめとする新興感染症が社会的課題となっている。感染症の拡大を防ぐためには、その伝播メカニズムを正しく理解し、科学的根拠に基づいた対策を講じることが不可欠である。感染症流行動態の理解には数理モデルが有用であり、集団を感受性人口(S)、感染人口(I)、回復人口(R)の3区分に分類する古典的SIRモデルなどが広く用いられている。部分免疫を含むSIRIモデルは、SIRモデルに再感染および免疫消失を導入したモデルであるが、これらは常微分方程式で表される決定論的モデルであり、空間的構造は考慮されていない。本研究では、決定論的SIRIモデルを確率論的点パターンのアプローチにより空間個体群動態モデルへ拡張し、空間分布を陽に考慮した数理的解析を行う。Gillespieアルゴリズムを用いて確率論的点パターンモデルを実装し、平衡状態における点の状態の空間配置のパラメータ依存性(感染核の距離など)に関するシミュレーション解析を行う。さらに、各点が特定の状態をとる確率(シングレット確率)および2点からなるペアが特定の状態をとる確率(ペア確率)に基づく解析モデルを導出し、シミュレーション結果と比較する。解析モデルはトリプレット確率を含むため閉じた形とならないが、モーメントクロージャを導入することでシングレット確率とペア確率の平衡状態を解析的に導出できることを示す。その結果、感染範囲が小さい条件下ではシミュレーション結果との差異が生じたが、これはトリプレット確率の近似や数値計算の打ち切りによる誤差の影響であると考えられる。本研究は点が動かないメタポピュレーションモデルでもある。点パターンの各点を現実世界の小さな町や村とみなすことで、感染症の対策の立案に活かしたい。


日本生態学会