| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-536  (Poster presentation)

都市の個体は電磁波に反応する:ショウジョウバエにおける通信用電波の影響【A】
Effects of high-frequency electromagnetic waves on Drosophila suzukii【A】

*米澤英駿(千葉大・院・融合), 高橋佑磨(千葉大・院・理)
*Hidetoshi YONEZAWA(Grad. Sci. Eng., Chiba Univ.), Yuma TAKAHASHI(Grad. Sci., Chiba Univ.)

人口集中が加速する都市では、新たな公害として、夜間人工光や電磁波などが問題視され始めてきた。近年は通信量急増を背景に、都市ではモバイル通信やWi-Fi等の高周波の電磁波の利用が拡大している。これらの新興公害が与えるヒトへの影響は小さいことが示されているものの、他の生物への影響は不明な部分が多い。また、世代時間の短い昆虫では、都市ストレスに対する耐性の進化が起きている可能性がある。本研究では、都市および郊外に広域分布するオウトウショウジョウバエDrosophila suzukiiをモデルとし、昆虫類に対する高周波の電磁波の影響と電磁波耐性の郊外-都市勾配に沿った個体群間変異の解明を目的とした。実験には、都市・郊外各7地点由来の単雌系統(2~5日齢の雌成虫)を供し、2.4/5GHz帯Wi-Fiルーターの設置・非設置条件下で、給餌条件での24時間の日周活動および飢餓条件での生存日数を測定した。その結果、電磁波曝露により、都市個体群由来の個体(都市個体)でも郊外個体群由来の個体(郊外個体)でも夜間における活動量は増加し、睡眠時間は減少していた。日中における活動量は、都市個体では電磁波曝露により増加し、郊外個体では減少した。一方、飢餓環境下では、都市個体で生存日数が有意に減少していた。また、活動量が高い個体ほど生存日数が短くなった。これらの結果は、高周波の電磁波が本種の日周活動パターンや生存日数に影響することを示し、郊外個体と都市個体では電磁波に対して遺伝的に異なった反応を示すことを示唆している。なお、都市個体のほうが電磁波に対して脆弱であるという結果は非適応的な進化の可能性を示している。ただし、活動量の増加は電磁波に対する忌避反応とも捉えられる。高周波の電磁波は距離減衰しやすいので、都市個体における電磁波曝露による活動量の増加は忌避行動である可能性がある。生存日数短縮は、閉鎖空間での過剰な回避行動によるエネルギーの浪費が原因かもしれない。


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