| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-538 (Poster presentation)
ホトケドジョウ属には、日本固有の5種が含まれる。本州には、平野部に広域的にホトケドジョウ(Lefua echigonia)が、山間部(最上流部)に局所的に3種の「ナガレ」ホトケドジョウが分布している。そのうちトウカイナガレホトケドジョウ(L. tokaiensis)については、約100万年前に活発化した東海地方での造山運動に伴い隔離され、山間部に適応した集団が種分化したという説が提案されており、その他2種のナガレホトケドジョウとともに、魚類における平行進化の例として注目されている。このような「ナガレホトケドジョウ化」は、山間部に孤立したホトケドジョウ集団で同様に起こっている可能性がある。千葉県南部・房総丘陵は地史的に比較的新しい隆起地帯であり、この地域の河川の最上流部にホトケドジョウが多数生息している。ここでは、堆積岩の激しい侵食により起伏の大きな山岳的な地形が形成されている。このような環境は、各種のナガレホトケドジョウが生息する山間部の細流環境と類似しており、「ナガレホトケドジョウ化」の初期段階を記述できる可能性がある。そこで本研究では、房総丘陵に生息するホトケドジョウの最上流域環境への適応の可能性を、形態と物理環境から検証することを目的とした。房総丘陵の河川最上流部4地点、およびその周辺の典型的なホトケドジョウの生息地である平地河川3地点、計7地点でサンプリングを実施した。詳細に体形を計測した結果、河川最上流と平地河川の個体で顕著な形態差が見られた。この差は、ホトケドジョウが房総丘陵の最上流部の環境に適応していることを示唆し、ナガレホトケドジョウ化の可能性を示す。今後は、MIG-seqによる詳細な集団遺伝解析などを予定している。