| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-539 (Poster presentation)
近年、都市環境における植物の適応進化に関する研究が蓄積されているが、その多くは単一の種を対象としたものである。そのため、複数種が共通の環境変化に対して平行的な適応パターンを示すかについては検証が進んでいない。都市と農地は、温度環境、他個体との競争、撹乱頻度において対照的な選択圧を植物に課している。都市集団と農地集団が、それぞれの自生地に対して相反的な局所適応を遂げているかを明らかにすることは、都市化が進む現代における進化生態ダイナミクスを理解する上で重要である。
本研究では、都市から農地にかけて普遍的に分布するイネ科3種(オヒシバ(n=220)、メヒシバ(n=192)、エノコログサ(n=126))を対象とし、圃場にて都市・農地の環境を模した相互移植実験を実施した。各由来(都市・農地)個体群の適応度を評価するため、初期草丈、乾燥重、光合成活性(Fv/Fm)、生理ストレス指標(アントシアニン量、クロロフィル量)、および開花開始日を記録した。
地上部乾燥重において、オヒシバとメヒシバでは実験区の影響に関わらず、農地由来個体が都市由来個体よりも有意に大型化した。開花開始日は種間で対照的な応答を示し、オヒシバでは農地由来が、メヒシバでは都市由来個体が有意に早かった。3種いずれにおいても、実験区(環境)による開花日への影響や、生理ストレス指標における一貫した局所適応の傾向は検出されなかった。
本研究の結果から、種ごとに異なる進化が進行している可能性が示唆された。オヒシバとメヒシバ農地個体の大型化は、競争の激しい農地での資源獲得最大化への適応と考えられ、逆に都市個体の小型化は、貧栄養下での迅速な種子生産(逃避戦略)や草刈りの回避に有利に働いていると推察される。また、開花期の差異は、環境変動に対する種固有の生活史戦略を反映しているかもしれない。今後はより多様な分類群を対象とした多角的な検証が不可欠である。