| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-543  (Poster presentation)

イトヨのヒレ形態の個体群間差を生む遺伝基盤【A】
Genetic basis for intraspecific diversification of fin morphology in three-spined sticklebacks【A】

*丸山亮(東京大学), 玉井滉基(東京大学), 山崎遥(名古屋大学), 西口智也(国立遺伝学研究所), 細木拓也(北海道大学), 小北智之(九州大学), 森誠一(岐阜協立大学), 石川麻乃(東京大学)
*Ryo MARUYAMA(Tokyo Univ.), Kouki TAMAI(Tokyo Univ.), Haruka YAMAZAKI(Nagoya Univ.), Tomoya NISHIGUCHI(NIG), Takuya HOSOKI(Hokkaido Univ.), Tomoyuki KOKITA(Kyushu Univ.), Seiichi MORI(Gifu Kyoritsu Univ.), Asano ISHIKAWA(Tokyo Univ.)

硬骨魚類において、ヒレは遊泳や姿勢制御などに関わる重要な器官であり、様々な種が多様な形態を示す。異なる遊泳速度や遊泳行動を示す魚は、異なるヒレの形をもつ例が多く知られる一方で、野生種の近縁個体群間においてヒレの形の違いを生む具体的な遺伝基盤の多くは未解明である。そこで本研究では、これを明らかにするため、トゲウオ科イトヨ(Gasterosteus aculeatus)に着目した。イトヨは、海から淡水域まで多様な環境に生息しており、個体群間にヒレ形態の多様性が見られる。本研究では、生息環境の違いが遊泳や姿勢制御に関わるヒレ形態の多様性を生むと考え、環境の異なる北海道幌内川(以下幌内川個体群)と、岐阜協立大学保護池(以下岐阜個体群)のイトヨに着目した。まず両個体群間で、遊泳や姿勢制御に関わる胸ビレ、背ビレ、臀ビレの基底部と鰭条の長さ、鰭条の本数と枝分かれの回数を測定した結果、ヒレ基底部と胸ビレ鰭条、背ビレ頭部側の鰭条、臀ビレ尾部側の鰭条が、幌内川個体群で長かった。特に胸ビレは、最も長い鰭条の位置が個体群間で異なり、幌内川個体群は四角形、岐阜個体群は扇形の胸ビレを持つと示唆された。また背ビレと臀ビレの鰭条における枝分かれ回数、臀ビレの鰭条の本数も幌内川個体群の方が多かった。これは生息地の広さ、流速などの生息環境の違いに応じて、岐阜個体群と幌内川個体群が異なる形態の胸ビレと背ビレ、臀ビレ鰭条を持つよう進化した可能性を示唆している。更に、幌内川個体群と岐阜県濃尾平野湧水域の個体群間のF₂雑種を用いた量的形質遺伝子座解析により、本研究で明らかになった個体群間の形質の違いの多くについて、原因となる候補ゲノム領域を同定した。本発表では、この候補ゲノム領域内の遺伝子について、ヒレ再生時の発現量解析やアミノ酸配列解析の結果を踏まえ、ヒレ形態の個体群間差を生む遺伝基盤について議論する。


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