| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-544  (Poster presentation)

貯精の進化の駆動要因: 繁殖保証と遺伝的多様性、どちらのために進化したのか【A】
Ultimate drivers of sperm storage evolution: reproductive assurance or genetically diverse sperms?【A】

*佐藤雄亮, 瀧本岳(東京大学)
*Takeaki SATOW, Gaku TAKIMOTO(The University of Tokyo)

体内受精をおこなう多くの生物では、交配後にメスが精子を体内に貯蔵する貯精能力が進化している。この進化の駆動要因として主に2つがあげられてきた。1つ目は、オスと遭遇しにくい状況でも受精を可能にする繁殖保証である。2つ目は、複数オスの精子を貯精することで子の遺伝的多様性が増加することである。これら2つは相互に排他的ではないが、どちらが相対的に重要なのかは不明である。メスにとって、貯精とオス探索はどちらもエネルギーコストが伴う。だが、オス探索コストは抑えても貯精コストさえ払えば繁殖保証が得られる一方で、子の遺伝的多様性を得るには貯精とオス探索の両方にコストを払う必要がある。このことを踏まえ、貯精能力は、遺伝的多様性の獲得と比べてエネルギーコストの小さい繁殖保証のために主に進化するとの仮説を立てた。これを検証するため、数理モデルを用いて、貯精、オス探索、子の生産にメスの繁殖エネルギーを配分する投資戦略の進化を解析した。解析の結果、オスとの遭遇率や探索コストの幅広い条件下で、貯精は主として繁殖保証のために進化することが示された。[GT1.1]特に、オスとの遭遇率が低い場合や探索コストが高い場合に、繁殖保証の重要性が顕著であった。一方、遺伝的多様性が重要な駆動要因となるのは、オス遭遇率が高い場合と、子の生存率が遺伝的多様性に強く依存する場合に限られた。以上の結果は、繁殖保証が貯精能力進化を駆動する中心的役割を果たしてきた可能性を示唆している。


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