| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-546  (Poster presentation)

メソスカベンジャーリリースに形質媒介型の間接効果を導入する【A】
Incorporating trait-mediated indirect effects into mesoscavenger release【A】

*末永晴菜, 瀧本岳(東京大学)
*Hana SUENAGA, Gaku TAKIMOTO(Tokyo Univ.)

メソスカベンジャーリリースとは、腐肉をめぐって競争している腐肉食者群集において、優位腐肉食者の減少によって、劣位腐肉食者(メソスカベンジャー)が競争から解放されて増加する現象をいう。近年、人間活動に起因する優位腐肉食者の減少がもたらすメソスカベンジャーリリースの報告例が多い。そのほとんどで、劣位腐肉食者は増加するものの腐肉の現存量も増加している。これは、増えた劣位腐肉食者が優位腐肉捕食者の腐肉除去機能を代替できていないことを意味する。また腐肉食者間においては、単に資源競争だけでなく、優位腐肉食者が劣位腐肉食者の腐肉発見効率を促進あるいは阻害する形質媒介相互作用が働いていることが指摘されている。そこで本研究では、数理モデルを用いて、これらの形質媒介相互作用がメソスカベンジャ―リリースとそれに伴う腐肉現存量の変化に与える影響を調べることを目的とした。モデルのパラメタライズにおいては、優位腐肉食者の専門性が高い場合(ハゲワシなど)と低い場合(タスマニアデビルなど)を想定した。平衡状態を仮定した解析では、優位腐肉食者による促進相互作用により、中位腐肉食者の増加量は小さく、腐肉の増加量は大きくなった。逆に阻害相互作用の場合は、中位腐肉食者の増加量は大きく、腐肉の増加量は小さくなった。また、専門性の低い優位腐肉食者が大きな阻害作用を持つ場合には、優位腐肉食者が低密度からさらに減少する場合に限り、腐肉現存量が増加する現象が見られた。ただ、このケースに対応する野外例は見つけられなかった。以上の結果は、(1)形質媒介相互作用の向き(促進・阻害)や有無によらず、メソスカベンジャーリリースとそれに伴う腐肉現存量の増加は一般的に起きる、(2)促進相互作用は優位腐肉食者の腐肉除去機能に関するキーストーン性を高めていること、を示唆している。


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