| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-548  (Poster presentation)

超集積植物コシアブラによるマンガン吸収と土壌環境の関係について【A】
Relationship between manganese uptake by the hyperaccumulator Chengiopanax sciadophylloides and soil environment【A】

*小畠沙羅(酪農学園大学大学院), 保原達(酪農学園大学, 酪農学園大学大学院)
*Sara KOBATAKE(Graduate School RGU), Satoru HOBARA(Rakuno Gakuen University, Graduate School RGU)

植物の中には重金属を高濃度で集積する特性を持つものが存在し、これらは超集積植物と総称される。コシアブラ(Chengiopanax sciadophylloides)は、マンガン(Mn)超集積植物として知られ、地上部の乾燥重量あたり10000mg/kg以上のMnを集積するとされている。先行研究では特殊なMn輸送能を持つ可能性が示唆されている一方、土壌のMn濃度とコシアブラのMn超集積との直接的な関係は見出されてこなかった。しかしながら、Mnは土壌環境の変化に応じて複雑な動態を示し、pHや酸化還元状態の変化などが植物の利用可能性に影響することが知られている。このことから、コシアブラのMn超集積を考える上でも土壌環境の考慮が必要であると考えられる。そこで、本研究では生育地の土壌環境の違いがコシアブラのMn超集積に及ぼす影響を把握することを目的とした。調査は全6箇所(北海道 近文山、野幌丘陵、北海道大学苫小牧研究林、馬追丘陵、埼玉県 東京大学秩父演習林、奈良県 春日山)を対象とし、2024〜25年の6、7月にコシアブラ葉の採取と土壌調査を行った。葉は湿式灰化処理を行い、植物体Mnを測定した。土壌は含水率、pH(H2O、KCl)、交換態Mn、易還元性Mnの測定を行った。植物体Mn濃度は地点ごとで差異があり、超集積個体は近文山と春日山で確認され、その他の地点では全ての個体が超集積に満たない値を示していた。全体的な傾向として植物体Mn濃度と土壌の交換態、易還元性Mn濃度との間には有意な正の相関が認められた。しかし、交換態Mn濃度が比較的高い場合でも、潜在的に利用可能な形態の易還元性Mn濃度が低い地点では、必ずしも全ての個体が超集積をしているわけではなかった。これらのことから、コシアブラのMn超集積は植物利用可能性の高い交換態Mn濃度の高低だけでなく、植物が将来的に利用する可能性のある易還元性Mn濃度や、これらが実際に供給されるための形態変化の条件(低pH、還元的環境)の有無といった総合的な土壌環境に影響を受けている可能性が示唆された。


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