| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-551  (Poster presentation)

硫気孔原に自生する植物の生育土壌特性【A】
Relationship between soil chemical properties and plant species in various solfatara fields【A】

*黒須健斗(福島大学), 福島慶太郎(福島大学), 長澤耕樹(農研機構)
*Kento KUROSU(Fukushima univ.), Keitaro FUKUSHIMA(Fukushima univ.), Koki NAGASAWA(NARO.)

硫気孔原は、硫化水素や二酸化硫黄を含む火山ガスの沈着により土壌が強酸性化する極限環境であり、土壌pHは2〜3に達する場合もある。このような環境下では、養分の利用性低下やアルミニウム溶出などの影響により、一般的な植物の生育は著しく制限される。しかし、硫気孔原には特定の植物が定着し、硫気孔を中心とした特徴的な植生配列が形成されている。一方で、植生の成立に伴う土壌化学性、とくに無機態窒素動態との関係については十分に解明されていない。
本研究では、日本に分布する硫気孔原を対象に、植生の成立状況の違いに着目し、土壌pHおよび無機態窒素(NH₄⁺、NO₂⁻、NO₃⁻)動態の変化を地域差と共通性の両面から検討することを目的とした。調査は北海道、東北地方、九州地方の硫気孔原で行い、裸地および複数の植物群落から表層5 cmの土壌を採取した。各地点に成立する植物群落ごとに土壌サンプルを採取し、pHおよび無機態窒素濃度を測定した。
その結果、いずれの地域においても裸地では極めて低いpHが示され、NO₃⁻はほとんど検出されず、NH₄⁺およびNO₂⁻が相対的に高い値を示した。特に北海道の裸地ではNO₂⁻が高濃度で検出され、低pH条件下において硝化反応が途中段階で強く抑制されている状態が確認された。一方、植物が成立する群落ではpHが相対的に上昇し、NH₄⁺およびNO₂⁻濃度が低下するとともに、NO₃⁻が検出される傾向が認められた。この傾向は3地域に共通して認められた。
以上の結果から、硫気孔原では強酸性条件により硝化反応が抑制され、無機態窒素がNH₄⁺およびNO₂⁻として
土壌中に滞留する一方、植生の成立に伴って土壌化学性が変化し、窒素動態が植生の成立に応じて段階的に変化することが明らかとなった。


日本生態学会