| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-552  (Poster presentation)

豪雪による自然撹乱を受けたスギ林生態系における土壌呼吸の時空間変動とその要因【A】
Spatio-temporal variation of soil respiration and its driving factors in a Japanese cedar forest disturbed by heavy snowfall【A】

*鈴木美来, 斎藤琢(岐阜大学)
*Miku SUZUKI, Taku M SAITOH(Gifu University)

 森林における自然撹乱は、樹木分布、微気象、土壌環境などの空間的不均一性を増加させ、生態系の主たる炭素放出源である土壌呼吸の時空間的変動に影響を与える可能性がある。本研究では、雪害を受けたスギ林生態系に着目し、土壌呼吸速度の時空間変動とその変動要因を明らかにした。
 調査は岐阜県高山市の冷温帯常緑針葉樹林サイトに設置された生態系プロットで行った。スギが優占するこのプロットは、2014年12月に雪害による撹乱を受け、現在は被害が大きかった東側を中心に落葉広葉樹や草本が侵入している。本研究では、生態系プロット内の20地点において、閉鎖型チャンバー法を用いた表面積あたりの土壌呼吸速度、土壌温度、土壌水分の計測を2024年4月から2025年11月までの無降雪期間に計14回実施した。また、スギ個体の空間分布が土壌呼吸に及ぼす影響を調査するために、計測地点から半径3 m以内のスギ個体を対象に、計測地点とスギ個体の距離、スギ個体の胸高直径等を計測し、樹木分布指標を推定した。さらに、2025年6月には各計測地点付近に新たな計測地点を設定し、トレンチ法による根呼吸の推定を行った。
 土壌呼吸速度の季節変動は土壌温度に依存した。また、観測日ごとの土壌呼吸に占める根呼吸の寄与率は平均34%で、7月から9月の測定日にかけて上昇し、11月に低下した。しかし、トレンチ内に残された根の分解呼吸の一時的な増加により、根呼吸が過小評価された可能性がある。土壌呼吸速度の空間変動要因を土壌水分と樹木分布と仮定して重回帰分析を行った結果、7月の観測日では土壌水分のみが土壌呼吸速度の有意な説明変数となり、土壌呼吸速度の変動の約6割を説明した(R2=0.61)。一方、その他の観測日では樹木分布が有意な説明変数となった。以上より、初夏には土壌水分が土壌呼吸速度を制限する可能性があること、また無降雪期間を通して樹木分布が土壌呼吸速度の空間変動を説明する主要因であることが示唆された。


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