| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-556 (Poster presentation)
19世紀半ばに国土面積の1割を占めた国内の半自然草原は、1960年代以降、利用が激減し、現在では1%以下まで面積が縮小しつつあり、その保全が急務となっている。先行研究では、継続的に管理されている草原(管理草原)と管理放棄の草原(放棄草原)の間では、地上植物の組成が異なることが知られている。この違いは地下部に影響をもたらすと考えられているが、管理状況が異なる半自然草原における土壌特性や土壌微生物群集の特徴はよくわかっていない。そこで、本研究では長野県木曽郡開田高原における管理草原や放棄草原、過去に管理草原であった人工林において、土壌特性や土壌系機能、土壌微生物群集を比較し、地下部の観点から半自然草原での異なる管理状況による影響を評価した。本調査地の管理草原では主に2年に一度の火入れや草刈りが300年以上に行われていたと考えられており、放棄草原ではおよそ20年前からこれらの管理が行われておらず、管理草原では放棄草原より地上植物の多様性が有意に高いことがわかっている。土壌機能の指標として、土壌基礎呼吸、基質誘導性呼吸、窒素無機化速度を評価した。土壌微生物群集はリン脂質脂肪酸分析(PLFA)を用いて評価した。その結果、土壌系機能の指標の多くは草原と人工林の間ではほとんど有意な違いが見られなかったが、管理草原では放棄草原に比べ、土壌pHや含水率は有意に高かった。一方、管理草原では放棄草原より微生物のバイオマス指標であるPLFA濃度や菌類/細菌比が有意に高かった。土壌機能について、基質誘導性呼吸では管理草原の方が放棄草原より有意に高かったが、それ以外の指標では有意な違いが見られなかった。これらの結果は、短期的な管理放棄は地上・地下部の生物群集に影響を及ぼすものの、土壌機能には明確な変化をもたらしておらず、土壌機能は一定の冗長性がある可能性を示唆している。