| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-557 (Poster presentation)
マイクロプラスチック(MP)は5 mm以下のプラスチックの事であり,それを取り込んだ海洋生物への悪影響が懸念されている.海洋MP研究では,従来は300 µm以上が主な対象であったが,近年は300 µm以下の存在も指摘されている.しかし,海水中のMPの分析には大量採水と処理が必要で,コストや労力が課題となる.そこで本研究では,懸濁物食者である二枚貝の体内にMPが一時的に滞留する性質に着目し,二枚貝を指標に海水中のMPの状況を把握する事を試みた。
今回の研究では,広島県竹原市の港で2012~2025年に採取したイガイ(Mytilus coruscus)と海水を対象にMP分析を行った.二枚貝は軟体部を水酸化カリウム等を用いて処理した後,ヨウ化ナトリウムを用いた比重分離でMPを回収し,顕微FTIR測定後,MPの種類,大きさ,個数を求めた.海水は1000Lを採水し,10µm目合いのプランクトンネットでろ過後,回収した残渣を二枚貝と同様に処理した.
2022年の結果では、イガイ4個体から検出されたMP濃度は1個体あたり81個/m3,海水1000Lでは105個/m3であった.材質を比較すると,イガイはポリエチレン(PE)が27%,ポリプロピレン(PP) が27%,ポリエチレンテレフタラート(PET) が33%,その他が18%,海水はPEが38%,PPが54%,PETが3%,その他が6%であった.このように,海水と二枚貝のMPの組成はPETの割合に差はあるがおおよそ類似していた.サイズを見ると,300µm以下はイガイが93%,海水が95%,そのうち100µm以下はイガイが66%,海水が76%であった.つまり,両者に含まれるMPは300µm以下が大半である.これらの事から,二枚貝と海水でサイズや主要材質には類似性が認められ,二枚貝を用いて海水中のMPの組成やサイズをおおまかに推定できる可能性が示唆された.