| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-560 (Poster presentation)
温度の季節変動は、リター供給や分解を介して土壌中の窒素(N)およびリン(P)の可給性を変化させ、さらに植物の栄養獲得形質に影響すると考えられる。植物は、外部環境に応じて細根からアミノ酸、酵素などの有機化合物を放出し、根圏微生物の活性化や有機物の分解を通じて不足する栄養塩を獲得する。ところが、土壌栄養塩と細根形質の関係の季節変動は研究されておらず、年間を通じてどのように栄養獲得形質が制御されているのか不明である。本研究では、土壌栄養塩可給性と根浸出物の季節変動、およびNとPの相対的可給性の季節変化が根浸出物に及ぼす影響を調査した。すなわち、N可給性がより低下する季節にはアミノ酸などNを含む化合物の滲出量が低下する一方、P可給性が低下する季節にはNを含む化合物の滲出量が増加すると予想した。
日本に自生する落葉樹コナラと常緑樹アラカシを対象に、年間を通してひと月ごとに、土壌のN・P濃度、細根C・N滲出速度、細根フォスファターゼ活性を調べた。コナラでは、C・N滲出速度が夏季と初春に高まった。夏季のピークは光合成産物供給の増大、初春のピークは展葉前の栄養塩需要によるものと考えられる。初春に相対的な土壌リン可給性が大きく低下していることから、コナラはこの時期にNを含む化合物を根圏に放出することで、微生物の活性を高めPを獲得している可能性が示唆された。フォスファターゼ活性は主に温度依存的に変動した。初春に明瞭なピークが認められなかったことは、低温期には酵素の滲出に比べ低分子有機化合物よる栄養獲得が重要である可能性を示唆する。一方、アラカシではこれらの応答は明瞭ではなかった。以上の結果から、落葉樹では、地上部のフェノロジーに呼応して栄養獲得戦略が明瞭なフェノロジーを持つこと、落葉樹・常緑樹の地下部の戦略の違いを理解するためには年間を通じた形質の調査が必要であることが示された。