| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-567 (Poster presentation)
熱帯から亜熱帯域の陸域土壌は、シルト~粘土分に富む赤土が多く、土地開発等によって植生が失われ地表が露出すると流出しやすい。特に、島嶼地域では河川長が短いため、運搬された赤土は容易に沿岸域へ到達する。沿岸域に到達した赤土は懸濁・堆積することで、サンゴや海草等の光合成を阻害し悪影響を与える。
一方で、赤土には、鉄(Fe)やマンガン(Mn)等の光合成に必須の元素が含まることも知られている。サンゴ礁堆積物は、アラゴナイトやカルサイト等の炭酸カルシウム鉱物によって構成され、海草はリン(P)やFeによる成長律速を受けやすい。したがって、赤土は、海草の生育に対して光環境の悪化を通じた負の影響を与える一方で、必須元素の供給源として正の影響を及ぼす可能性もある。
本研究では、石垣島において赤土流入の有る地点(轟川河口、宮良川河口、名蔵湾)および無い地点(川平湾)に生育する海草を採取し、元素組成ならびに形態学的な違いから、赤土流入の有無が海草の元素組成・生育に及ぼす影響を評価した。堆積物中の元素濃度と海草体内の元素濃度との間に相関関係は見られなかったが、河口に近い地点ほど陸源土壌に含まれる元素(Fe、Mn、Si)濃度が高い傾向にあった。植物の各必須元素(C、N、P、Fe)の比率に基づいて評価すると、名蔵湾の海草が最も良好な状態を示し、光合成色素濃度も高く、葉幅や草丈も大きかった。その他の海域では、P濃度がFe濃度よりも低く、P律速による成長制限を受けている可能性がある。
したがって、サンゴ礁域に生育する海草であっても、河口域では赤土由来のFe供給によりFeは充足量に達し、NやPなど他の必須元素による成長律速を受けている可能性がある。