| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-568 (Poster presentation)
火山噴火跡地などに見られる一次遷移初期の裸地から植生が発達するには、先駆植物による有機物供給を含めた土壌形成が重要である。調査地である富士山火山荒原では先駆植物としてイタドリが知られており、有機物は主に3つの経路(地上部リターフォール、地下部リターフォール、根滲出物)から供給されると考えられているが、このうち根滲出物に関しては研究例が少なく、未解明である。そのため、本研究では根滲出物測定法の検証・確立と複数の経路における炭素供給量の推定を行った。
まず、滲出物を溶液に回収するバイアル法と、濾紙に回収するフィルター法の2つを用いて、イタドリの根滲出速度を測定した。その結果、フィルター法はバイアル法よりも約4倍高い値を示した。これは不溶性のムシゲルや根表面の細胞を回収できたかどうかによるものだと考えられた。本研究では根から土壌への有機物供給全体を対象とすることから、以後の実験ではフィルター法を用いることとした。
続いて、多年生草本のイタドリの当地での着葉期間(およそ5/20-11/10の175日間)における根滲出物量を推定した。そのために、フィルター法を用いて2時間または4時間ごとに計24時間測定することで日変化を、月1回、昼間の2時間を測定することで季節変化を明らかにした。
根滲出速度は午後に高くなる日変化を示し、日中の光合成活性との関連性が示唆された。また、季節変化については開花後の晩夏~秋にかけて根滲出速度が大きくなっており、時期による炭素分配先の違いが関係していると考えられた。以上より、イタドリの着葉期間中の滲出物量は72.3 gC m-2 period-1と推定された。一方、先行研究で得られた地上部および地下部リターフォールはそれぞれ101、102 gC m-2 period-1 であったことから、根滲出物は純一次生産の約2割に相当しており、重要な炭素供給経路として富士山火山荒原の土壌形成や微生物活性の向上に寄与していると考えられた。