| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-569  (Poster presentation)

森林へのバイオチャー施用が樹木細根の滲出速度に与える影響【A】
The effects of biochar application on exudation rates of tree fine roots in deciduous broadleaf forests.【A】

*河野巴南, 萩尾日香, 伊木未知夏, 吉竹晋平(早稲田大学)
*Hana KONO, Nichika HAGIO, Michika IKI, Shinpei YOSHITAKE(Waseda Univ.)

世界的に問題視されている温暖化の緩和策として、生物残渣を低酸素条件下で炭化させたバイオチャーによる炭素隔離が期待されている。それ自体難分解であることに加え、土壌改良を通じて植物成長を促すことで炭素を隔離できる。しかし森林へのバイオチャー施用時の地下部への影響を調べた例は少なく、特に根滲出物は純一次生産量の最大2割近くが配分される重要な成長戦略の1つであるにも関わらず、バイオチャーが樹木細根の滲出速度に及ぼす影響についてはよくわかっていない。そこで本研究ではバイオチャーが滲出量に与える影響とその主要因を調べることを目的とした。
2022年に10 t/haでバイオチャーを施用した暖温帯コナラ林(2022年施用区)において、2025年7月~10月の間、2ヶ月に一度の頻度でガラス繊維ろ紙を用いる方法(フィルター法)にて根滲出物を採取した。また、根滲出速度の変動要因を調べるために対照区、窒素添加区、リン添加区、バイオチャー添加区からなる小規模添加実験区を用意し、1~3か月間の培養後に根滲出速度を測定した。また、培養土壌の物理化学性についても測定した。
2022年施用区および小規模添加実験のバイオチャー添加区で滲出速度は上昇傾向を示した。窒素添加区でも滲出速度の上昇傾向が見られたが、土壌無機態窒素濃度はバイオチャー添加区で減少、窒素添加区で増加傾向であったことから、滲出速度の増加には異なる要因の関与が示唆された。窒素添加区では窒素添加それ自体や樹木の光合成活性向上によって相対的なリン不足が起こり、リン獲得のために滲出速度が増えた可能性が考えられる。一方でバイオチャー添加区では、バイオチャーによる吸着や無機化抑制により土壌中の窒素量が減少し、窒素獲得のために滲出速度が増えた可能性がある。
以上の結果から、バイオチャー施用は土壌中の窒素・リン濃度の変化を介して根滲出速度を増加させることが示唆された。


日本生態学会