| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-570 (Poster presentation)
リン(P)と窒素(N)は、森林生態系の主要な制限元素である。高温多湿な熱帯降雨林生態系では、土壌の風化が進みPが乏しいため、純一次生産はP制限を受けやすい。一方、撹乱後の二次林や一部の原生林ではN制限も生じうることが指摘されている。細根生産は土壌栄養の変化に鋭敏に反応し栄養制限の指標になり得るが、低P土壌における長期的な施肥への応答は不明な点が多い。特に、バイオマスと生産を同時に測定し、原生林と二次林を比較した研究はない。
本研究は、熱帯の低P土壌上の原生林と二次林において、14年間の長期NP施肥が細根のバイオマスと生産に及ぼす影響を明らかにする。ボルネオ島サバ州の原生林(混交フタバガキ林)と二次林(マカランガ属優占)に設置された施肥区(対照、+N、+P、+NP:各3反復)において、土壌コア法とイングロースコア法(3ヶ月間隔×4回)により、細根のバイオマスと生産を調べた。土壌深度0-5・5-15 cmで根径別(<0.5・0.5-2 mm)に測定した。
細根バイオマスは原生林で高く、細根生産は二次林で高い傾向を示した。P施肥に伴う根生産の変化は見られず、P制限仮説は支持されなかった。しかしP施肥は、一部の根径・深度でバイオマスを減少させ、回転率を増加させた。これらのことから、低P環境下の熱帯林では、根生産は維持しながら細根バイオマスが高まり、細根の回転率が抑制されることで長寿命・保守的な細根形質を維持している可能性が考えられる。一方N施肥は、細根バイオマスを減少させるだけでなく、細根生産を増加させた。これらはN制限の存在を示す。P施肥で生産が増加しなかったのは、このN制限による(Nは細根生産に必要な構造性タンパク質の主成分である)可能性も考えられる。以上より、ボルネオの低P熱帯林におけるN制限と、PとNの複合的な欠乏に伴う地下部炭素配分と根の機能特性の調整が示唆された。