| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-571  (Poster presentation)

富士山火山荒原におけるニホンジカの糞の影響評価:C・N投入量と糞の分解様式【A】
Evaluating the effects of sika deer dung on a volcanic desert of Mt. Fuji: carbon and nitrogen input and dung decomposition patterns【A】

*菊地思音(早稲田大学), 山本真瑠(早稲田大学), 大崎壮巳(早稲田大学, 学振・PD), 吉竹晋平(早稲田大学)
*Shion KIKUCHI(Waseda Univ.), Maru YAMAMOTO(Waseda Univ.), Soshi OSAKI(Waseda Univ., JSPS Research Fellow PD), Shinpei YOSHITAKE(Waseda Univ.)

 日本で観測される動物による森林被害のうち、シカによる食害や剥皮被害は6割にも上るとされている。一方で、草食動物の糞は、土壌や植生の発達において重要な炭素(C)・窒素 (N) 源にもなる。特に、土壌が未発達で貧栄養な環境である一次遷移初期においては、この動物糞が重要な役割を果たしている可能性がある。しかし、例えば富士山火山荒原の一次遷移初期において、この動物糞による影響を評価した例はない。そこで本研究では、シカが生息する富士山火山荒原を対象として、シカ糞によるC・N投入量の定量と、その分解過程の解明を試みた。
 富士山南東斜面の火山荒原(標高1600-1700 m)において、異なる3つの遷移段階を対象に10 m×10 mのコドラートを各3つ設置し、コドラート内に供給された糞の回収とその重量の測定を2025年6月から11月まで毎月1回行った。また、5月に回収した新鮮な糞を用いたリターバッグ法により、各遷移段階における糞の分解量を定量した。
 糞は年間を通して主に草本群落や森林に供給されており、年間で0.541 g m-2の供給量であった。そして、糞のC・N濃度は土壌におけるそれらの濃度よりもはるかに高かったことから、糞の供給は富士山荒原の未成熟土壌に大きな影響をもたらすと考えられた。リターバッグ実験の結果では、糞は約5ヶ月間で2-3割が分解され、その分解速度は遷移が進んだ場所(森林)ほど大きい傾向にあった。これは、遷移が発達するにつれて植生により糞内の水分が保持されやすくなるためであると考えられた。今後は、供給された糞やその分解過程で放出される溶存有機炭素、無機態の窒素・リンが土壌に移行してどのような影響をもたらすかを調べる必要があるだろう。


日本生態学会