| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-572 (Poster presentation)
バイオチャーは、生物由来有機物残渣を低酸素条件下で炭化した資材であり、分解が遅く土壌中に長期間残存することから炭素隔離の手段として注目されている。しかし、バイオチャー自体の分解過程に関する研究は少なく、その多くは農地や室内実験に限られており、重要な炭素吸収源である森林生態系における知見は不足している。また、バイオチャーは高い吸着能を持つことが知られ、森林の物質循環への影響が示唆されているが、野外で有機物吸着を定量的に評価した研究はほとんどない。そこで本研究では、森林表層に散布されたバイオチャーについて、無機化と溶出の2経路に分けて2年間の分解量を評価するとともに、有機物吸着量を定量することを目的とした。日本を代表する3つの森林タイプ(コナラ林、アカマツ林、スギ林)において、各林分の優占樹種由来のウッドチップ、及びこれらを原料とした自作バイオチャー、市販バイオチャーの3種のサンプルを用いて、全体の分解量を重量減少で測定し、その内訳として無機化量と溶出量を測定した。また、吸着有機物量は逐次抽出法(水、熱水、弱塩基の3段階)を用いて評価した。
結果として、バイオチャーは原料と比較して分解速度が極めて遅く、内訳としては無機化量が大半を占めることが分かった。しかし、全体の分解量よりも内訳である無機化+溶出量の値が大きくなり、この原因としては有機物吸着が考えられた。そこで、逐次抽出を用いた有機物吸着量の定量結果では、どのバイオチャーも微生物が比較的利用しやすい有機物(水+熱水抽出画分)を同程度吸着することがわかった。また、吸着の影響を差し引いても、バイオチャーは2年間で1割程度しか分解されないことがわかった。よって、バイオチャーは森林においても難分解性であることが示されたが、その定量的評価やバイオチャーが土壌圏の物質循環に及ぼす影響の解明のためには有機物吸着を考慮する必要があるだろう。