| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-578 (Poster presentation)
マングローブ林は、沿岸生態系が固定・貯留する炭素(ブルーカーボン)の重要な担い手であり、特に土壌中に大量の炭素を蓄積する生態系として注目されている。陸上生態系と異なり、葉や枝などの地上部リターは潮汐の影響により流出しやすい。そのため、高い土壌炭素貯留量の形成には地下部由来の炭素供給が重要と考えられ、特に短寿命で更新を繰り返す直径2 mm以下の細根の動態が大きく関与している可能性がある。そこで本研究では、亜熱帯マングローブ林における細根生産量、枯死量およびターンオーバーを定量化し、その空間分布と地下部炭素供給への寄与を評価した。調査は沖縄県石垣市のオヒルギ(Bruguiera gymnorhiza)およびヤエヤマヒルギ(Rhizophora stylosa)が優占する林分で実施した。細根動態の把握にはEnRootシステムを用い、観測チューブを約80 cmまで埋設し、1年間にわたり3か月間隔で画像解析を行った。その結果、細根生産量および枯死量は土壌表層で最大となり、深層に向かって低下する明瞭な鉛直分布を示した。年間平均細根生産量は約1.1 MgC ha-1 yr-1で、その約8割が深度18 cmまでの表層に集中していた一方、季節変化は明瞭ではなかった。細根ターンオーバーは約1.5 yr-1で、深度や季節による変動は比較的小さく、熱帯・亜熱帯林の既報値と同程度からやや高い水準であった。深層では生産量および枯死量は小さいものの、ターンオーバーは大きく低下せず、少量ながら細根由来炭素の継続的供給が示唆された。以上より、潮汐により地上部炭素供給が制限される環境下でも、細根の更新がマングローブ林の土壌炭素蓄積の一端を担っている可能性が示された。