| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-579  (Poster presentation)

亜寒帯湿地林のリター分解に与える小型水生無脊椎動物と土壌動物の影響【A】
Effects of small aquatic invertebrates and soil fauna on litter decomposition in subarctic wetland forests【A】

*濵田悠太(玉川大・院・農), 吉川朋子(玉川大・農・生産農), 友常満利(玉川大・農・環境農)
*Yuta HAMADA(Tamagawa Unvi., Agri), Tomoko YOSHIKAWA(Tamagawa Unvi., Agri-Prod.), Mitsutoshi TOMOTSUNE(Tamagawa Univ., Agri-Env.)

湿地林は土壌中に多量の炭素を蓄積し、大気中CO₂の貯留に寄与する重要な生態系である。湿地土壌の炭素蓄積には落葉(リター)の分解過程が関与し、その過程には土壌生物や水生生物が影響を及ぼす。しかし、小型動物が湿地林におけるリター分解に果たす役割は十分に解明されていない。本研究では、北海道弟子屈町の落葉広葉樹が優占する湿地林を対象に、常時冠水しない非冠水域、水溜まりなど一時的に冠水する半冠水域、湧き水により恒常的に冠水する冠水域の3領域において、リター分解量とそれに関与する土壌・水生動物群集構造を明らかにし、土壌炭素蓄積への影響を検討した。

各領域に調査区(n=5)を設け、優占4樹種の落葉を用いたリターバッグ法により約500日間分解を評価した。メッシュサイズは、小型動物および微生物の影響を受ける2 mmと、主に微生物の影響を想定した1 mmの2種類とした。あわせてリターの炭素・窒素含有率を測定し、定期的にリター中の動物群を抽出・同定した。

分解はすべての領域およびメッシュサイズで経時的に進行し、約500日後には領域間およびメッシュサイズ間で有意な差は認められなかった。しかし、2 mmメッシュでは初期に急速な分解が見られ、1 mmメッシュでは全期間を通じて緩やかに進行した。リターからは17目24科の動物群が確認され、非冠水域ではダニ類やトビムシ類などの土壌動物が優占し、冠水域ではカゲロウ類などの水生動物が多く出現した。半冠水域では、非冠水時には非冠水域と類似した群集を示した一方、冠水時には冠水域とも異なる独自の群集構造を示した。

以上より、林床水分環境の違いはリター分解初期過程および関与する動物群集構造に影響を与えることが示された。特に半冠水域は、水陸環境が交錯する湿地特有の空間として動的な群集変化を示し、湿地林における炭素蓄積機構の一端を担う可能性が示された。


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