| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-580 (Poster presentation)
地球温暖化対策の一手法として、難分解性で炭素を長期に貯留できるバイオ炭が注目されており、近年は森林生態系への散布による炭素隔離の可能性が検討されている。これまでバイオ炭散布の影響については、土壌理化学性や微生物、植物バイオマスを対象とした研究が多いが、林床に豊富に存在する落葉(リター)の分解に重要な役割を果たす中型土壌動物への影響は十分に解明されていない。
本研究では、バイオ炭施用後の経過年数が中型土壌動物群集に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。調査は埼玉県本庄市の暖温帯コナラ林で行った。木質由来のバイオ炭を施用し、その後2年、6年、10年が経過した区画(10 t ha⁻¹)および非施用区を対象とした。各区画でリター層を採取し、ツルグレン装置を用いて土壌動物を抽出した。あわせて土壌含水率、地温、pH、有機物量を測定した。
その結果、トビムシ目、ケダニ亜目、ササラダニ亜目、トゲダニ亜目などが主要な構成群として確認された。施用後初期段階では中型土壌動物の総個体数が減少する傾向が認められたが、経過年数とともにその差は縮小し、10年経過区では顕著な差は認められなかった。一方、施用区では土壌含水率に明瞭な差がみられたが、地温、pH、有機物量には大きな違いは認められなかった。個体数および種数は土壌含水率と有意な関連を示して変動しており、群集構造はバイオ炭施用そのものよりも微環境的な水分条件の影響を強く受けている可能性が示唆された。
以上より、森林生態系へのバイオ炭散布は中型土壌動物群集に一時的な影響を与えるものの、その影響は時間の経過とともに緩和されることが示された。今後は中型土壌動物の摂食機能群まで踏み込んだ解析を行うことで、バイオ炭散布が土壌有機物分解過程に及ぼす影響をより包括的に評価することが期待される。