| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-581 (Poster presentation)
鱗翅目幼虫は植物葉を大量に摂食し、その摂食・排泄過程を通じて生態系内の有機物動態に影響を及ぼすと考えられる。近年、南方起源種の分布拡大が進み、果樹園の生垣に用いられるマキ科植物を加害するキオビエダシャクの大量発生が報告されている。本研究では、果樹園景観において生垣を加害するキオビエダシャク幼虫と、柑橘類を加害するアゲハ類幼虫を対象に、摂食量および糞量を定量化し、鱗翅目幼虫の摂食特性とその物質循環への潜在的影響を明らかにすることを目的とした。玉川大学南さつまキャンパスの暖温帯果樹園において、2025年夏季および秋季に生垣および果樹から採集した幼虫を飼育し、日単位で摂食量と糞量を測定した。さらに、摂食前の葉および糞の炭素・窒素含有率を測定し、成分特性を比較した。その結果、単位体重当たりの摂食量はキオビエダシャクで大きい傾向を示したが、有意差は認められなかった。体重と摂食量の関係はアゲハ類で明瞭な比例関係が確認された一方、キオビエダシャクでは明確な関係は認められなかった。単位体重当たりの糞重量はキオビエダシャクで大きく、糞の炭素・窒素含有率はいずれの種でも葉より高く、特にキオビエダシャクで高値を示した。葉由来の炭素および窒素は糞中で約8~9割減少しており、その多くが幼虫のバイオマス成長や代謝活動に利用された可能性が高い。以上より、両種の比較を通じて、鱗翅目幼虫の摂食・排泄特性には種間差が存在する可能性が示された。特にキオビエダシャクは単位体重当たりの糞排出量および糞中の炭素・窒素含有率が高く、大量発生時には土壌への有機物供給量や成分特性に影響を与える可能性がある。今後は全成長段階を網羅した長期飼育実験および糞の分解特性の評価を行い、その生態系影響をより詳細に検証する必要がある。