| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-582 (Poster presentation)
バイオ炭は木質有機物を熱分解して得られる難分解性資材であり、炭素含有率が高いことから土壌中へ炭素を長期に安定的に隔離できる。近年、森林生態系への散布について検証がされつつあるが、優占種の異なる林分間での応答差、特に有機物分解の促進に伴う余剰な炭素放出量については十分に明らかにされていない。
本研究では、日本で広く見られる優占種の異なる5林分(コナラ、シラカシ、スギ、モウソウチク、アカマツ)において、(1)バイオ炭散布はリター分解を促進するか(2)その応答および炭素隔離効果は林分タイプにより異なるかを明らかにすることを目的とした。調査は東京都町田市および埼玉県本庄市で実施した。各林分には、バイオ炭散布区および対照区をそれぞれ3区ずつ設置し、散布区には優占種由来の木質資材から作出したバイオ炭を散布した(10 tC ha⁻¹)。各林分の葉リターを用いたリターバッグ法により、分解過程を765日間追跡した。
その結果、ほとんどの林分で散布区のリター残存率は対照区より低く、特にコナラ林、シラカシ林、スギ林では有意な分解促進が認められた(p < 0.05)。リター分解促進に伴う余剰炭素放出量は投入炭素量の数%未満にとどまり、765日時点で、散布した炭素量の97%以上が土壌中に隔離されたままであると算出された。すべての林分で正味の炭素隔離効果は維持されたが、放出量および隔離量には林分間で差がみられ、特にスギ林では相対的に放出量が大きい傾向を示した。これらの林分間の差には、バイオ炭の質、リターの質、林分環境の質の違いが関与している可能性がある。
以上より、森林生態系へのバイオ炭散布は林分タイプにより応答強度は異なるものの、総じてリター分解を促進し、高い炭素隔離効果を維持することが示された。また炭素隔離効果を最大化するためには、優占樹種および林分環境を考慮した適用が重要である。